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2012.08.17     カテゴリ:  Duty-本編- 

   42話 隠したい過去




 布団の中に籠った、異常なまでの蒸し暑さと頭痛で私は目を覚ました。息苦しくて、視界にはなぜか涙が溜まっていた。身体はだるく、いつもの2倍くらい重い気がする。
「ふ……っ」
 風邪だ。セナの言う通り、すぐにシャワーを浴びなかったために、熱が出てしまったのだ。窓に目を向けると、少しだけ空は明るくなり始めていて、時計は午前3時過ぎを差していた。
 どうしよう……。
 重い上半身だけ起こすと、自分が大量に汗をかいていることに気が付いた。額を流れるいくつかの雫。熱のための汗なのか、風邪をひいてしまったことに対する焦りからの汗なのかは、全く分からなかった。
 セナを起こそう。そう思ってベッドから降り、よろよろとよろめきながら、セナが寝ているソファーの背もたれへと手を伸ばした。そのまま背もたれに上半身を預け、セナの身体を片手で揺すった。
「セナ……」
 長い睫毛を見つめながら彼を揺するが、セナは全く起きる気配がない。どうしようもない不安と、夜明けの寂しさで、私は今にも泣き出しそうだった。いつもは私が寝る時、セナはパソコンで何かを調べたり、酒を飲んでテレビを見ていたりする。そのため、私より寝る時間帯が遅い。だが今はセナが眠っていて、私は起きている。何だか取り残されたようで悲しい。
「セナ…セナ……」
 涙声になりながら先程よりも強くセナを揺すった。するとゆっくりと彼の瞼が開いた。アンドロイドとはいえ彼は寝ぼけているようで、私を半開きの目で見つめている。
突然彼が私の顔に向かって右手を伸ばしてきた。その理解できない、何の意味があるのかも分からない行動に、私は首を傾げながら彼を凝視する。
 意識がはっきりしてきたのか、彼自身も自らの右手の動きに疑問を抱いたようで、すぐに私に向けていた右手を自分の身体の上に戻した。
「……どうしたの?理真ちゃん……?」
 どうしたのと聞きたいのはこちらの方だ。一体何の夢を見ていて、私へと手を伸ばしていたのだ?もしや元カノの夢でも見ていたのか?しかし今はそんな彼の夢の話をしている場合ではない。
「……ん?」
 私の様子がおかしいことに彼は気が付いたのか、半開きの目で顔を顰めながら私の顔を覗き込んだ。
「熱、あるの?」
 ……流石だ。この薄暗い中で私の表情を読み取り、その表情から熱があると分かるのだ。
「38℃近いね……大丈夫?」
「え……?」
 なぜ私の体温まで分かるのだ?そう私が疑問を抱いたような表情をすると、彼は優しく笑った。
「サーモグラフィーで、いつもよりも体温が高く見えたからね。」
「さ…サーモグラフィー!?」
「うん。ちょっとごめんね。見た目だけじゃ。詳しい体温は分からないから。」
 彼はそう言うと、彼に上半身を覆い被さるようにして覗き込んでいる私の額に、大きな手のひらを当てた。
 ほんの3秒後だった。
「38.2℃。完璧に風邪だね」
 私はてっきり怒られるものだと思っていた。「オレの言った通りに、すぐにシャワーを浴びていれば熱なんて出なかったんだよ」そんなようなことを言われるものだと思っていた。自業自得。そう思われると思っていたのだが、彼は私の予想とは全く正反対の行動に出る。
「病院から処方されてる薬とか、ここに持って来てる?」
「……持って来てない」
 なんせ私はセナといる間、1度も風邪をひいたことがなかった。それは私にとって奇跡とも言えることで、両親がいた頃は2カ月に1度は風邪をひいてしまうほど病弱だった。なぜそんな私が長い間、風邪をひかずに済んでいたのか。……誰のおかげか分かっている。
 美味しくて、バランスのとれた食事を作ってくれた。父・母が突然の交通事故で亡くなったことで、心が不安定になってしまった私を一生懸命励ましてくれた。
そう、全てセナのおかげだ。
「じゃ、薬は家にあるの?」
「……たぶん。」
 セナは熱で火照っている私の頭をポンポンと軽く叩くと、上半身を起こして私に囁いた。
「オレ、薬取って来てあげるから、理真ちゃんの家の鍵、ある?」
「え…いいよ!そんな…」
「病院に行くかどうかは、薬飲んでみてから様子みよう。……オレと一緒にいる間、全く風邪ひいてなかったんだから優秀だよ」
 セナは立ち上がり、私の手を引いてベッドへと向かうと、私に横になるよう促した。
「オレが帰って来るまで寝てな」
「…セナのおかげだよ?」
「…ん?」
「セナがちゃんとあたしの面倒見てくれたから。だからあたし、風邪ひかずに済んだんだよ。毎日毎日楽しかったし、風邪ひく暇もなかった」
 私がベッドに横になり、セナを見上げてそう答えると、セナはなぜか無表情で私を見下ろした。
「…すぐ…帰って来るからね。熱さまシートも買ってくるから。薬は家のどこにあるの?」
「リビングの隅の棚…一番下」
「分かった。大人しく寝てるんだよ?」
「……うん」
 彼は汗ばんだ私の額をそっと撫でて汗を拭き取ると、微笑んでベッドから離れていき、暗い部屋の中でスウェットのズボンからいつもの黒いズボンへと着替え始めた。
「じゃね」
 財布をズボンのポケットに挿し込み、私の家の鍵を手にすると、セナはいつものように私に笑顔を向けた。
「ごめんね……」
「大丈夫だよ。それよりちゃんと寝てるんだよ」
そう言って彼は私の家へと向かうため、工場を出て行った。薄暗い空が窓から見える。
 なぜセナがベッドに横になった私を見下ろした時、無表情になったのだろう。いつもなら、ああいう場面でセナは笑顔を見せてくれるはずなのに。
 ……単純に眠たかったのだろうか。
 私は特に深く考えることもなく、また静かに目を閉じた。



 理真から借りた鍵をズボンのポケットの中から探す。見上げた空は夜と朝が共存しているような、幻想的な色彩を漂わせていて、東の空は赤い光りが輝いていた。もう少しで太陽が顔を出す。
 鍵穴に鍵を挿し込み、理真の家のドアを開けた。耳元には遠くを走る新聞屋のバイクのエンジン音が聞こえている。鍵をポケットの中にしまい、靴を脱いで家の中へと入った。理真の家には理真がリストカットをした日以来、来ていない。それは理真も同じだ。しかしなぜだろう。理真はもうここには住んでいないのに、理真のあの優しい匂いがこの家の中に充満している。まるで先程まで彼女がここにいたかのようだ。きっと彼女の優しい匂いが何十年もの生活の中で家に染みついたのだろう。
 早く薬を探して、帰らなければいけない。まだ薄暗い廊下を歩いて、リビングへと向かった。



 理真の言っていたと思われる、リビングの隅にある棚の一番下の引き出しを開けると、白い紙の袋に入った薬がいくつも収められていた。抗生剤、解熱剤があるか確認すると、全ての薬を取り出して引き出しを閉めた。一応全ての薬を持って行った方がいいだろう。そう思ったのだ。
 膝をついたまま、ふと頭を上げると、理真の家族写真に目が止まった。理真がリストカットした時にも見た写真で、ただの高校入学の記念の写真に変わりはなかった。
 しかし、なぜか写真の中の彼女の父と母にこちらを見られているような気がした。本来ならばカメラを見ているはずの2人の瞳。だが理真の両親の瞳は、自分の汚い心を見透かしているように見えるのだ。
見透かされている。……何もかも。自分がどれだけ汚い生き方をしてきたのか…全部……。きっと怒られる。自分のような汚い奴が理真の面倒なんて見ているから。
「ただ…恩返しが…したかったんです。理真ちゃんに……」


セナ 理真の家



 理真の両親に対する言い訳が静かな家の中に響く。そんな言い訳をしても、きっと理真の両親には許してもらえない。彼自身も、もし自分が親で自分の子供がこのような汚い生き方をしてきた、ましてや人間ではない、アンドロイドに面倒など見られたら、悲しさと怒りのあまり震えるだろう。アンドロイドの自分が親で、子供がいたらと考えること自体、間違っているのだろうか。
 大きなため息が彼の口から漏れた。最初は自分がどういう生き方をしてきて、どういう過去を持っているのか、それを理真に知ってもらい、少しでも理真の生きる教えになれればと思っていた。しかし理真と一緒に過ごした月日は自分の考えをも一転させてしまった。   
自分の汚い過去を……理真だけには知られたくない。そんな考えに変わっていた。自分は理真の過去にづかづかと踏み込んでいるのに、こんなことを考えるのは自分勝手だと思う。しかし理真に嫌われるのが、今の楽しい2人の仲が壊れるのが怖くなったのだ。
自分が理真に頼られる人間であるためにも、理真の支えになるためにも、自分の過去に踏み込まれる前に離れるのが一番いい。
 そして自分が他のアンドロイドに追われている今、理真を危険な目に遭わせるわけにはいかない。これ以上、理真の両親に怒られるようなことをするわけにはいかないのだ。





自分と離れた後の理真が心配で仕方ないセナ。

叔母さんのところへ行かせたいことを



なかなか理真に言い出せない……。






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プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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