アクセスカウンター


お知らせ
最新話→77話 生命と命←NEW! リンスのつぶやき→は、は、は…春休み!


Dutyバナー


--.--.--     カテゴリ:  スポンサー広告 

   スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

2012.08.12     カテゴリ:  Duty-本編- 

   41話 手紙






 残酷にもほどがある。そうハチコウは思った。理真はあれだけセナを信頼し、あれだけセナの後ろにくっついている。あれほどまでに彼女を可愛がって、大切にして、最後は突き離すというのか?
「そんな酷いこと……理真のこと、ちゃんと考えろよ」
「……オレも嫌だよ。こんな無責任なことするの」
「じゃ、どうしてだよ」
「……オレはもう逃げられない。逃げて背を向けたら確実に殺されるから。だけど戦えば少しでも生きる可能性が広がると思うんだ。理真ちゃんの近くにいるには、逃げずに奴らと向き合うしかない。生きるためには、生きるか死ぬかの賭けに出るしかないんだよ。そしたらオレは理真ちゃんを危険な目に遭わせることになるかもしれない」
 ……きっとこの選択は、理真が辛いのは勿論、セナも辛いと思う。だがハチコウにはもう1つの考えがあった。
「お前には、理真と暮らしながら奴らと向き合うっていう選択はないのか?」
 そうだ。彼はデストロイドと呼ばれるほどの殺人鬼、戦う能力を持っていた。5年前の話だとしても、彼にそれほどまでの実力があるのなら、乗り切ることは可能なのでは……。
「お前はデストロイドだろ?殺人鬼って言われてたんだろ?ならお前は理真を守りながら……」
「見られたくないんだよ」
 セナは濡れた前髪を掻きあげて、今にも泣きそうな顔をした。これほどまでに弱っているセナを見たのは、ハチコウにとって初めてだった。


41-1


「何が…だよ」
「銃を持って、直接アンドロイドと戦うオレの姿……。なんて言ったって、オレは欠陥品で容量もオーバーしてるアンドロイドだからさ、戦い方とか吐き気がするくらい酷いんだよ」
「酷いとか吐き気とか言ってる場合じゃないだろ!?」
「……ハチコウは見たことがないから、そんなことが言えるんだよ」
「見たことある!お前は5年前、あのデューティからオレを助けてくれた時……」
 5年前……。ハチコウはもう1度考え直した。
もしかして……。もしかして、セナがタグを奪われてしまったのは……。
「もしかしてお前がタグを取られたのって…オレを助けようとした時か……?」
「……違うよ」
 セナは否定した。しかしハチコウはセナの力ない否定の言葉を、肯定と取った。
「ごめん」
「え?なんで謝るの?違うって言ってるでしょ?」
 セナの周りは彼がずぶ濡れのせいで、水溜りができていた。
「オレのせいで……」
「だから違うって言ってるでしょ?しつこいなハチコウ。オレが違うって言ってるんだからいいの!」
 雨はやがて弱くなり、雲間から日差しが差し込んできた。どうやら先程の大雨は通り雨だったようだ。
「酷いとか吐き気がするとか言ってるけど、お前、自分が思ってるほどそんなに酷くないぞ。5年前、オレは見たから。一部始終だけどな」
「あんなの話にもならないよ」
「……どういうことだ?」
「だってあれ、オレの力の1割も出してないよ?」
「は……1割も満たない力でお前はオレを助けたって言うのかよ」
 これはセナの過剰な発言ではなく、きっと事実なのだろう。
「だけどオレは自分の力の半分以上は出せない。……自滅すると思うから」
「じ…自滅…?」
「自分をコントロールできなくなる。オレ、欠陥品だから。……相手の身体の動きや戦うことに集中していくと、意識がどんどん薄れていくんだ。それで1度、怖い思いをしたから」
 怖い思い。セナのことだ。本当の恐怖を味わったのに、怖い思いをしたなどと優しく簡単に言っているのだ。
「四面楚歌ってやつかな。逃げようとすれば死ぬし、力を出し過ぎても死ぬ。……でもハチコウ」
 セナの鋭い瞳がハチコウに突き刺さるように飛んできた。
「オレ……死ぬつもりはさらさらないから。いくらオレが不利だとしても、オレは死ぬつもりはない。どんな手を使ってでも、オレは生きるよ。……だけどどんな手を使ってでもって中には、自分の力を半分以上使わざるを得なくなる時が出てくるかもしれない。そしたら理真ちゃんが危険になる。だからオレは美華子叔母さんに理真ちゃんを預けたいの」
 セナらしいプラスの考え方だった。
「オレが生きようとするためには、理真ちゃんが必然的に危なくなるんだよ。勿論アイツが襲って来て危ないっていうのもあるけど、オレ自身も危ない存在になると思うから。……別にお別れとかじゃないからね。勝手にオレを殺さないでね。理真ちゃんはしっかり説得する。まぁ、適当な理由をくっつけてね。本当のことを言ったら、理真ちゃんビビって眠れなくなると思うから」
「……相当なチキンだな」
「今から始まったことじゃないよ。……美華子叔母さんの住所はもう調べたから、手紙で近いうちに理真ちゃんを預かってほしいって伝える。勿論理真ちゃんがオレに会いたい時にはちゃんと会うし、叔母さんと一緒にいて溜まったストレスはオレがちゃんと発散させるから大丈夫だよ」
 空は明るくなり、虹がかかっていた。その綺麗な光景にハチコウは目を細め、静かに言った。
「……でも寂しくなるだろ。会えるとはいえ、ここから理真がいなくなったら。有里香の時みたいにな」
「そうだね。でも有里香の時とはまた違った寂しさだね」
 コンクリートに腰を下ろしたまま、セナが微笑んだ。
「そろそろ理真ちゃん、シャワー浴び終わる頃かな」
「じゃ、また来るよ。……残りの同居の時間、楽しく使えよ」
「分かってるよ」
「なんだ……オレの方が悲しくなってきた」
 ハチコウは閉じた傘を手に、雨上がりの晴れた空へと走り出た。
「今日の夕ご飯は美味いもの作ってやれよ!」
「はいはい」
「残りはタッパーに入れておいてくれ。オレ、食べにくるから」
「いや、それは困るんだけど」
 そんな言葉も聞かずに、ハチコウは早々と工場の門を潜り、角を曲がって消えて行った。大雨の中、置いたままにしてしまったドラム缶は、セナと同様ずぶ濡れになっていてセナが持とうとすると、ツルツルと腕からすり抜けた。
「あぁ……最悪」
 彼はまだ、小さなことで最悪と言える日常を満喫する時間が欲しかった。



「理真ちゃーん!シャワー浴びたぁ?」
 工場の中へとドアを開けて入ったセナは目を丸くした。
「あ。セナ」
 濡れた髪で、あの黒地に白い線が入った作業着を着たままの理真が、にっこりと彼に笑顔を向けてきた。
「な……何してるの!」
 てっきりシャワーを浴び終えているだろうと思っていたセナは、大声で理真に怒鳴った。
「テレビが面白くてさ」
「オレ、ちゃんとシャワー浴びなって言ったよね!?」
「…そんなに怒らなくても」
 理真は頬を膨らませて、セナをじろりと睨みつけた。理真の足元には彼がコンクリートの上に作ったように、小さな水溜りができていた。おそらく、彼女も彼と同じように長時間ここに立ち尽くしていたのだろう。
「ったく、もう。風邪ひいたらどうするの?」
 セナはダイニングテーブルの椅子の背もたれに掛けていたタオルを理真の頭に被せ、ガシガシと拭いた。
「痛いってば!」
「こんなに冷たくなって……」
 彼の手のひらから伝わってくる理真の頬の温度は、氷のように冷たかった。
「早くシャワー浴びて!」
「だっ大丈夫だよ!風邪なんてひかないってば!」
 理真の肩を掴み、風呂場へと連れて行くと、嫌がる彼女をそのまま風呂場に閉じ込めた。
「よく温まってから出てきな!」
「ちょっと!作業着どうすればいいの!?ねぇ!……セナ!」
 セナは風呂場の扉を背中で寄り掛かって押さえる。
「ちょっと!ねぇ!開けて!」


早く。


「作業着ぐらい、洗濯機に入れさせてよ!お風呂にはちゃんと入るから!!!」


 早く……手紙を……


「セナ!なに黙ってんの!?」


41-2







 ……書かなければ。






スポンサーサイト
web拍手 by FC2








トラックバック

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
セナは理真ちゃんが、本当に好きなんですね。ただの好きなんて言葉じゃ表せないくらいに。
なんとかならないのかなあ。う〜ん。


そうですねぇ…。セナ君は理真ちゃんを可愛がり過ぎです。
追い込まれたセナ君……。

自分で自分の首を締めざるを得ない状況ですね(泣)




プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

ブロマガ購読者向けメールフォーム


検索フォーム
すぴばる
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。