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2012.08.05     カテゴリ:  Duty-本編- 

   39話 家族



 もう嫌だ。勘弁してくれ。私の足はもうむくんでいる。
「どう?なんか怖そうな人になってる?」
 売り物のサングラスを掛けて、セナは私に尋ねてくる。
「セナ。もうプリクラも撮ったし、帰ろうよ」
「えー。ノリが悪いねぇ。理真ちゃん」
 私の足は乳酸が溜まって、もう違和感しか感じない。だんだんセナと会話するのも面倒になってきた。早く帰りたい。セナを誘ったのは私だ。だが逆にセナに引きずり回されることになるとは……。
「あのさ、セナ。マジで帰ろ?」
 ごめんねセナ。酷い終わり方だね。しかし私はもう歩けないのだ。セナだって私を負ぶって帰るのは流石に嫌だろう?
「そうだね。うん、帰ろ。……と、その前に1つやり忘れてたことがあった」
 そう言ってセナは持っていた売り物のサングラスを、適当に陳列棚に置いた。
「ちょっと!ここじゃないよ!」
 セナが適当に陳列棚に置いたサングラスを正しい位置に戻していると、彼が突然私にこう言った。
「オレの勇姿を見せつけてやろう」
「は?」
「そこで待ってて。ナンパして来る」
 は?意味が分からない。どうして突然ナンパなどしようと思いついたのだ?しかも私という連れがいるというのに。
「オレの華麗な技を見せてやろう」
 セナはそのまま私に背を向けて、通りの隅で会話をしている女子大生らしい2人組みに向かって歩いて行った。
「……帰っていいのかな?」
 どうせ、セナは戻って来ないだろう。…なら、このまま帰ってもよいだろうか?セナのことだ。成功するに決まっている。しかし彼は「華麗な技を見せてやろう」と意気込んでいた。やはり見てやらないと話にならないだろうか?
「ねぇ、お姉さん。綺麗だね」
 あぁ。セナはよくあるスタンダードな方法から仕掛けていくのか。やはりセナの顔を見て、彼女たちは予想通り騒ぎ出す。
「イケメーン!やだ!ちょっと何!?」
 彼女たちの明るいブラウンの髪が揺れている。セナもアンドロイドながら、あのような無邪気でロングヘアの可愛い子が好きなのだろう。……悪いことをした。私は地味で、可愛くもないし、髪はセナと出会う前に切り落としてしまった。
セナは私と暮らしていて、息が詰まるような思いをしているのだろうか?もしかしたら、セナのストレスは暇からきたものではなく、私と一緒にいることからかもしれない。私と一緒に出掛けられたことが嬉しかったのではなく、外に出られたことが、私の世話から一時的に解放されたことが、彼は嬉しかったのだろうか……。
確かに家事をして、私の面倒を見て、彼はほとんど工場を離れられない状況が続いている。
 セナと出会って3カ月。私に飽きた……か。
 相手がアンドロイドとはいえ、飽きられたというのはショックだ。なんだかいつもより背伸びをして、つけまつげを付けて、リップを付けてここに1人で立っていることが、酷く滑稽で涙が出そうになる。やはり背伸びをした時は誰かに見てほしいものだ。しかし私にはその誰かは彼しかいない。セナしかいない。セナ1人しか……。
 すぐそこでナンパをしているセナの姿を見ていると、私の視界が徐々にぼやけてきた。セナだってきっと、あの子たちのような可愛い彼女がまたできるに決まっている。しかしセナはまた彼女ができたとしても、自分がアンドロイドだということは言わないだろう。そしたら私はどうすればいい?私はセナがアンドロイドであるということを前提に、セナと暮らしている。セナがアンドロイドだということを取り除いたら、ただの男女の同棲だ。それを知らない彼女は、きっと私の存在を不信に思い、やがて敵意を向けて排除してこようとするだろう。そしたら私はセナの目の前から姿を消すしかない。今度こそ、1人で生活しなければならない。
 人は独りで生まれ、独りで死んでいくと、両親が死ぬ以前から聞いたことがあった。けれどこれほどまでに自分が孤独になってしまうとは思ってもいなかった。もしセナと仕方なく離れて、本当の孤独と向き合うことになった時、私はこの憎しみと悲しみ、寂しさには耐えられないだろう。しかしその孤独と向き合わなければならなくなる日は、必然的に私の2度目の人生の転機として襲いかかってくる。……いや、今からこんな未来のことを考えても仕方がないのだ。
私はただ全てを受け入れればいいのだ。孤独も、勿論憎しみも。押し潰されるか、押し潰されないかはともかく、全てを受け入れ続ければいい。セナが自分はアンドロイドだということで、幸せを敬遠し続けて来たことはセナの生活を見ていれば私でも分かる。…そろそろいいのではないか?セナが幸せになっても。相手さえ、彼女さへ理解してくれれば、きっとセナは幸せになれる。
 セナが幸せになれる日は、私が孤独の中へ飛び込んで行く日。セナが私の幸せと、自分の幸せを天秤にかけた時、彼には迷わず自分の幸せを選んでほしい。望むのはそれだけだ。それが私から彼への恩返しだ。私に飽きたことが、幸せに進む一歩になるのなら、私はそれを静かに受け入れよう。
 そんなことを考えていたら、鼻の奥が痛くなってきた。帰った方が良いかもしれない。今にも泣き出しそうだ。



 私はトボトボと人の流れに逆らいながら歩き出した。体中に鳥肌が立ったが、寒いわけではなかった。
「あ……英語のプリント」
 そう言えば英語のプリントが渡っていたのに、すっかり忘れていた。
「……やらなきゃ。……セナに怒られる」
 そうだ。セナの機嫌を取るために、セナが私に最初にくれた作業着を着て工場の掃除をしたら、喜ぶだろうか?待て。あの黒地に白い線の入った作業着、もう3カ月以上見ていないぞ。
 その時だった。後ろからものすごい勢いで右手首を掴まれ、そのままのスピードで身体全体を引っ張られた。
「わぁっ!」
 ひったくりでもなく、人さらいか!?しかしすぐに安心した。
「理真ちゃん!なんで帰ろうとしたの!?」
 セナだったからだ。私はセナにそのまま引っ張られながら言った。
「だっ…だって!あたしあの場にいても仕方ないでしょ!?」
「なんで!?オレ、ナンパして逃げて来たのに!」
「はぁ?もしかして見せたかったのって……」
「ナンパダッシュ。」
 あぁ。この男は本当に最低だ。
「ちょっとセナ!危ないって!」
 通りを全速力で走る私たちを見て、周りの人は目を点にしている。恥かしいなど通り越して、もはや道を開けて下さいという気持ちでいっぱいだった。セナはなぜか嬉しそうに、飛ぶように笑いながら走っていた。



 200メートルほど疾走すると、セナは私の手を引いたまま薄暗い路地に駆け込んだ。私は咳き込みながら膝に手をついて屈んだ。しかしアンドロイドの彼は汗一つかかず、なぜか大爆笑している、結局は彼の自称・運動音痴という言葉も嘘だったのだ。息一つ全く乱れていない。
「ねぇ、なんでオレのとこ置いて行こうとしたの?」
 私の気持ちなど知らずに、彼は自分勝手なことを私に言う。
「宿題、忘れてたのに気が付いたんだよ」
 嘘ばかり言うセナに、嘘で仕返しをする。
「え、さっき工場出る前にやってたのは宿題じゃなかったの?」
「あれも宿題」
「ふ~ん。そっか。何の教科?」
「英語」
「大丈夫大丈夫。オレはネイティブ並みに英語できるから」
 当然だ。アンドロイド、その中でも頭脳型なのだから。仕事もしてないのだから、その脳みそを私のために全力で使ってくれてもいいだろう?
「いやぁ、危なかった。危なかった。喰われるところだったよ」
「……は?何が?」
 喰われるところだった?何がだ?
「いやぁ、聞いてよ。オレがあの2人組の女の子に自動販売機でジュース買ってあげたら、すごく喜んでさ。お礼にキスしてあげるって言われて」
「キ……キス!?」
 大胆にも程がある。というか、公道でそういう行為は……なんていうか……NGではないか?
「で、逃げて来た」
「お前、やっぱり最低だ」
 そうだ。最低だ。私が彼の幸せを考えて、彼が少しでも充実した人生を送ることができるようにと願っているというのに、私の気持ちまでもセナは踏みにじるというのか。
「セナ。そんなんじゃ、幸せになんてなれないよ?」
 セナ、それは自虐行為か?ナンパしては逃げて、自分の中の孤独を際立たせて、逆に苦しいではないか。
「……何言ってるの?オレは今、充分幸せだよ?」
 思わぬ答えが返ってきた。私は目を見開いて彼を見つめた。彼は私の様子を見て、首を傾げている。
「は?だって『オレは幸せだとは言えない』って言ってたじゃん。」
「……今は幸せ」
「は?」
 どういうことだ?彼がアンドロイドだという事実は変わっていない。彼の不幸の原因は、自分が人間ではなく、アンドロイドだからという理由ではないのか?違うのか?
「確かにオレは前、オレは不幸だって言ったよ。だけどね、今はすごく幸せ。だって理真ちゃんにもう1度出会えたんだから」

 それは……あまりにも小さ過ぎる幸せだった。

「10年前の初めての人間に、またオレは出会えたんだよ?そんな経験できるアンドロイドなんて、他にはきっといないよ。笑顔を教えてくれた人にまた出会って、一緒に馬鹿やって、こうやってまた過ごしてる。これって幸せでしょ?」
 セナが求めてきた幸せは、こんなにも小さなものだったのか?私と一緒にいる。それで満足だというのか?
「オレはね、自分勝手な奴だから、理真ちゃんがオレと一緒にいて、息苦しい思いをしていても、関係ないの」
 ……多少自己中だが、私はそれでも嬉しかった。私と一緒にいることが幸せ。誰だって、そんなことを言われたら嬉しいに決まっている。私は単純な人間だから、先程考えていたことなど全て排除し、「10年前のように手を繋いで帰ろう」と提案してきたセナにそのまま流されて、薄暗い路地を2人並んで手を繋いで帰った。
私はこの時、なんとなくセナと本当の家族になれたような気がしていた。


セナ・理真 路地



いつも読んでくださって、
ありがとうございます☆

さてさて、やっと更新できました(喜)


セナ君の伝説が花を咲かせています
問題児です。ホントに。

セナ君のやらかし場面を描く時、
私はほぼ爆笑状態です。


(爆笑)


この話を境に、一気に全てが動き出します。



セナ君の過去と本当の姿に、
驚愕される方もいるかもしれません。


セナ君は……理真ちゃんに
本当のことを……


まだ言っていない。




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プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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