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2012.05.06     カテゴリ:  Duty-本編- 

   32話 ブラックリスト






 ハチコウが大家に嫌われる理由は1つではない。部屋の周りが汚いのだ。アパートの錆びた鉄製の階段を上って3つ目のドアが彼の部屋へと続くものだ。その周りには大きなゴミ袋が散乱していて、ときどきカラスがあさりにくる。彼はカラスだって生きているのだからと大家に弁解するが、根本的にゴミの日ではないのにゴミ袋を外に出しているお前が悪いと、この5年間言われ続けている。
 ベランダには、セナに押し付けられて仕方なくもらって来た異臭のする花が置かれている。これも当初は批判が多く、窓が開けることができないと隣の独身サラリーマンは嘆いていた。しかしこの時だけ、大家はなぜか彼を庇ってくれたのだ。家の周りにゴミ袋ばかり置いていて、物を大切にしない彼が花を育てていることに感動したのかどうかは分からないが、花をベランダに置くことに大家は反対しなかった。
 彼の外見は18歳くらいだ。まだ子供なのだからと、大家は多少甘やかしている。彼は成長しない。このままでは一生彼は大家に子供扱いをされるのだろう。彼だって引き時は考えている。あと1年が限界だ。それ以上経つと年齢が変わらず、成長しないということが確実にばれてしまうからだ。だが彼はこのアパートが好きだった。けして部屋が広いわけでもない。風呂場の浴槽なんて小さくて体が痛くなるほどだ。それでも彼の帰るたった1つの場所ということに変わりはなかった。今でも思い出す。セナがこのアパートを借りて、お前の家にしろと言った時のことを。セナは大家に、「従弟なので、よろしくお願いします」とやはりあの時も嘘をついていた。
「懐かしいなぁ。もう5年も経つのか。」
 デリバリーのピザを頬張りながら、ハチコウは暗い部屋でノートパソコンを開いていた。多少パンの屑がパソコンに落ちることは気にしていない。一度パソコンが壊れるなど、痛い目に遭わなければ、このアンドロイドは学習することができないのだ。
 青白いパソコンの画面のバックライドが彼の顔に反射する。彼は次の仕事のターゲットにするアンドロイドを、インターネット上で調べていた。以前セナが持って来たリストは随分と古いものだったため、ネットに頼る他なかったのだ。しかしインターネットというのは情報の正確性に欠けている。ネットで調べたとしても、その後の自らの情報収集に力を入れなければならない。それが面倒で本当はやりたくなかったのだ。
「めんどくせ。」
 もう何度言ったか分からない。食べているのに口を開くから、口の中から食べているものが零れて行く。「汚ねぇ」と言って零したものをまた口の中に戻す彼。一番汚いのはお前だ。
 画面をスクロールし、簡単そうなアンドロイドを探す。狙撃しかできないセナのために、無理のないように良さそうなアンドロイドの名前を探す。
「不発だな。今日は。」
 そういう時も彼らにはあるのだ。三流アンドロイド用の仕事として公開されているものには、三流アンドロイドのターゲットしか乗せられていない。つまり三流同士の壊し合いになるわけだ。しょぼい壊し合いと言ってよいと思う。しかしセナは三流の中でも下流、水溜り程度の実力しかない。生き延びるためには、セナよりも弱そうなアンドロイドの名前が載るのを待つしかないのだ。
「ブラックリスト…か。」
 彼の目に止まったのは、言わば指名手配のような扱いをされている欠陥品、危険なアンドロイドの名前が乗せられているページだ。欠陥品の彼にとっては他人事のページではなかった。昔、彼が欠陥品として、まだセナに殺されたことにしていなかった時は、毎日びくびくしながらこのページを開いていた。しかし5年経った今ではもう気にもしていない。他人事のページだ。セナに殺されたという嘘が上手く通用したらしいのだ。案外製造元も節穴なのではないかと心の中では馬鹿にしている。それも仕方ないだろう。自分のような欠陥品を社会に放出し続けているのだ。馬鹿にも程がある。現にどうして自分たちアンドロイドが社会に放出されているのか、彼らは理由を知らない。人間の中に紛れ込ませて何かよいことがあったのか。彼らには悪い面しか見ることができない。
 人間なら当然のようにある存在意義。父がいて、母がいて、自分は愛されて生まれてくる。それが彼らにはない。生まれてきた理由を教えてくれる人もいない。愛されていたわけでもない。…こんなに悲しいことは…他にない。
 ブラックリストを開き、画面をスクロールしていた時だった。ある一点に目が止まった。思わず持っていたピザを落とし、画面に目を見張った。
「嘘だろ?…どうして…」
 自分の名前が載っていたわけではなかった。しかしそこには自分以上に大切な人の名前が載っていた。


ハチコウ、驚き




「…Duty。」


 Duty No.4202 
 彼の頭の中をあの笑顔が駆け抜けて行った。紛れもなく、その型名と製造番号はセナのものだったのだ。

Duty ブラックリスト


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プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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