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2012.04.19     カテゴリ:  Duty-本編- 

   27話 静かな夜




 夜12時をまわろうとした時、私はベッドに入り、枕元の電気だけを点けて目を閉じた。セナが風呂場で水を使う音が聞こえてくる。その水がどこからきたのかを想像していると、私はいつの間にか眠りの世界へとおちていた。
 あれからきっと5分も経っていなかったと思う。ベッドが軋む音がして、私は目を開けた。ふと見ると黄緑色のTシャツを着て、タオルを頭から被っているセナの後ろ姿が目に入った。彼はなぜか私のベッドの縁に腰かけていたのだ。


27-1



「…寝ちゃった?」
「…ちょっとね。」
 左手にミネラルウォーターを持ったままの彼が、小さい声で私に話しかけてきた。
「ごめんね。」
「え?」
「…いろんな意味でごめん。」
「どういうこと?」
 何を謝っているのか分からない。私と口を利こうとしなかったことだろうか?何の出来事について謝っているのか、話してもらわないと困る。何も分からないではないか。
「ごめん。今回ばかりは目を合わせて話せそうにないや。」
「あたしに目を会わせられないほど、酷いことしたの?」
「うん。」
 タオルから僅かに見える彼の茶色の髪から、雫がぽたりと落ちるのが見えた。
「2ヵ月以上前。オレね、理真ちゃんのお父さんとお母さんの事故のこと、調べたの。それで、加害者の女に会ってきた。」
「…え?」
 それは私がここ2ヵ月間、封印してきた憎い存在だった。だがいくら封印しても、心の中から消去することはできない。しかし私はその憎しみと2ヵ月間、上手く付き合っていた。日常生活では、ほとんど気にならなくなっていたと言ってよいと思う。けれど今の彼の言葉。加害者という言葉で、私の憎しみは封印を解かれてしまった。
「まず通学途中の高校生に話を聞いて、その次に事故現場の近くの家に話を聞いて、次に直接あの女と話したって言う精肉店のおじさんから話を聞いた。」
 私はベッドから上半身を起こして、彼の背中を見つめた。
「理真ちゃんの幼馴染のお母さんとも話したよ。事故現場に置かれた花の面倒を見てくれてる。それで、そのお母さんから住所を教えてもらって、あの女の家に行った。」
「…嘘だよね…?」
「…ごめん。」
 本当のことだと言うのか?
「理真ちゃんの言った通り、あの女が理真ちゃんのお父さんとお母さんにぶつかったんだ。だけど2人を助けるために車は動かされちゃって、警察も曖昧になったんだ。なんでぶつかったのかも分かったよ。あの女は膝の上に幼い息子を乗せて運転していたんだ。すぐに泣き出すからって周りには言ってたらしいけど…。その息子が暴れてよそ見をした時に、理真ちゃんのお父さんとお母さんにぶつかったんだ。」
 私の心を優しく包んでくれた彼が、まさかそのベールを引き剥がそうとするなんて、考えてもいなかった。
 痛い。裏切られたようだ。
「オレはあの女と直接話した。仕事帰りを狙って。それで…」
「嫌だ。」
 私は自分の耳を塞いだ。そして首を横に振った。もう聞きたくない。あの女に関することは私が傷付くことしかない。私はもう充分傷付いた。心だけではない。体もだ。左手首のリストカットだって、元を辿ればこんな不幸に私を陥れたあの女のせいだ。
 セナは私の見方だったはずだ。いつだって私を助けてくれた。仲良くしてくれた。大学の学費まで出すと言ってくれた。…友達になってくれた。なのにどうして私が傷付くと分かっていてこんな話をするのだ?
 まるであの時のようだ。病院で、美華子叔母さんが父と母が死んだと私に伝えようとした時、私は泣きながら耳を塞いだ。あの時も聞きたくなかった。いつだってそうだ。私の耳に入るものは全て悪い知らせばかり。もう予想はついているのだ。
「理真ちゃん。」
「何で今頃そんな話するの?もうやめてよ。」
「…オレがやらかしちゃったから。」
「…え?意味が分からないよ。」
 塞いでいた私の耳にも、微かに彼の言葉が聞こえてきた。私は静かに塞いでいた手を耳から離した。
「あの女は自分の罪を認めようとはしなかった。勿論償うなんて考えてもいない。…オレは感情的になり過ぎて、あの女を刺激するようなことを言っちゃったんだ。」
 罪を認めていない。償うつもりもない。無論私は傷付いた。しかしそれ以上に彼の言いたいことが気になって仕方なくなっていた。
「それであの女に言われたんだ。あの女の父親、暴力団と関わっているらしくてね…。理真ちゃんに何かあっても知らないって、脅しをかけられたんだ。」
「ぼ…暴力団!?」
「もうオレはそれ以上、その女のところには踏み込めなかった。いくら真実を認めさせて、警察に差し出そうって言ったって、理真ちゃんが襲われたらそれは解決したことにはならない。」
 彼が私に背を向けているせいで、彼がどんな表情をしているのか、私は全く分からなかった。
「話すか話さないかで、すごく迷った。理真ちゃんが手首を切った時も、オレはずっと迷ってた。だけどオレは、真実を伝える勇気がなかったんだ。理真ちゃんは明るく生活しようとしている。それが表向きだけだったとしても、もう幸せの第一歩を踏み出したことになってる。あとはオレが目を離さなければいい。だけどオレの目は節穴だらけだったんだ。それが今日、よく分かったよ。」
「今日?」
「理真ちゃんと今日一緒に学校から帰って来る時、オレは始めから誰かにつけられていることに気が付いてた。」
「何で言ってくれなかったの!?」
「怖がらせなくなかったんだ。だけど誰につけられているのかは、オレも分からなかった。それで思ったんだよね。理真ちゃんを襲いに来た暴力団なんじゃないかって。」
「え…。」
「あの脅しは本当だったのかもしれないって、オレも怖くなって…その時にちゃんと話しておくべきだったって思ったんだ。オレは今日、理真ちゃんに頼まれなかったら迎えには行かなかった。もしオレがいなかったら理真ちゃんは酷い目に遭ってたかもしれない。」
 そんな思いをして、私と一緒に歩いていたのか?どうして何も言わなかったのだ?
「でも違ってて安心した。ただの女子高生だったから。でも不安定になってたオレは、連鎖的に悪い方向に考えを膨らませてしまった。」
「どういうこと?悪い方向?」
「…理真ちゃんが…いじめられてるんじゃないかって。」
 唖然とした。そこまで考えていたのか?そこまで心配してくれていたのか?
「オレは、理真ちゃんから友達がいないって聞いてたから、嫌がらせなんじゃないかってずっとあの子が来た時に思ってて。それにあの子、妙にオレに興味を示したから、彼氏だとか広められて理真ちゃんがからかわれるようになったら、理真ちゃん、これから学校に行けなくなるって思って。」
「え?」
「…今だって辛いのを押し殺して学校に行ってるでしょ?何も知らない、幸せに青春を送ってるあの子たちと、暗い世界で闘ってる理真ちゃん。少なからず、理真ちゃんだって他の子たちとの違いを感じてるはず。」
「それはそうだけど。」
 けれど仕方がない。そうやって表面上は普通の高校生と同じようにしていかなければ、この世界では生きていけないのだから。
「理真ちゃんのところ、おもしろがってるんじゃないかと思ったら、腹が立って。」
「大丈夫だよ。夏実の周りはそうだったかもしれないけど、夏実自身はあたしのことを心配して来てくれたから。」
「…ならよかった。」
 本当にセナは何を考えているのか分からない。ふざけているセナが本物なのか。それとも今の彼が本物なのか。
「殺すって脅すのはいくらなんでも勢い余り過ぎだよ。相手は女の子だよ。」
「いいんだよ。自分のわがままを貫いて理真ちゃんを困らせるような友達は、今の理真ちゃんには必要ない。」
「…過保護にも程があるよ。」
「でも、今回のオレの態度で2人の関係が悪くなったのなら…ごめんね。オレ、頭では分かってたのに。感情的にはならないようにしようって。それに…あの女のことも。」
 確かに彼の感情的な行動のせいで、私は被害を被った。夏実の件。そして、あの女の件。あの女の件は、本当に冗談では済まない。…殺されるかもしれないのだから。
第三者からの報復。やはりセナの推測は当たっていた。あの女の後ろには暴力団がいる。
「いいよ。セナ。」
 もういい。私を助けようとしてしたことだ。
「…ごめん。」
「…いいよ。」
「オレ、これからは充分警戒するし、学校にも迎えに行くようにするから。…傍から見たら彼氏に見られるかもしれないけど…。」
「それは困る。」
 これは既に友達の域を越えてしまっている。
「あたしとセナさ、もう兄弟みたいだね。」
「え?兄弟?」
「うん。セナがお兄ちゃんで、あたしが妹。」
「それは無理だよ。」
「え?どうして?やっぱあたしと兄弟は嫌?」
「だって、理真ちゃんが80歳でも、オレはまだ24歳だよ?兄弟なんて無理だよ。」
「そっか。孫の年齢か!?」
 セナはベッドの縁から立ち上がると、私に横になるよう促し、布団を掛けてくれた。
「あと7年でセナと同じ歳か。なんか不思議だね。」
「…あと7年間だけは理真ちゃんのお兄ちゃんでいてあげられるから。」
「あ、結局そうくるの?」
「そう言えばあの子、とんでもない美人だったなぁ。」
 ぼんやりと彼は思い出して呟く。
「夏実?」
「うん。オレ結構タイプだな。」
 互いにけなし合っていたが、案外気が合うかもしれない。2人が仲良くなっている姿を思うと、なぜか私まで温かい気持ちになった。
「きっと仲良くなれるよ。セナも寝るんでしょ?」
「うん。明日の仕事の準備してからね。気にしなくていいよ。おやすみ。」
「…おやすみ。」

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こんばんは。

そう、とっても氣になっていたんですよ。事故の件は、あれでなかった事になっちゃうのかって。
小説のリアリティを優先するなら、「暴力団の後ろ盾か、あきらめよう」もアリかと思うんですが、せっかくアンドロイドがいるから、現実では難しいような爽快なリベンジもなんて期待もしたりして。
でも、そうですよね。理真ちゃんの心理状態だと、まだリベンジとかそういう問題じゃないのかもしれませんね。

いずれにしても、主人公の二人の今後と、いい味キャラの夏実ちゃんの登場、楽しみにしています。

ありがとうございます。
テンプレ変えましたw

よろしくお願いしますね。
少し見にくいかもしれませんが…


そうですね。小説だと、リベンジとかもあるかもしれませんよね。
ですが、今の理真ちゃんの状況から考えると、
やっぱり無理なんですよねぇ。

セナ君が暴力団に仕返しに!
って思われる方も多いかもしれないのですが、

やはりセナ君は自分ではなく、
理真ちゃんへの報復に恐れているんですよね。


所詮アンドロイドも人間の前では無力なんですよね…

人間に造られた身。
人間に手を下すことは、
やはりセナ君にもできません…


セナの葛藤ですね。




プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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