FC2ブログ
アクセスカウンター


お知らせ
最新話→77話 生命と命←NEW! リンスのつぶやき→は、は、は…春休み!


Dutyバナー


--.--.--     カテゴリ:  スポンサー広告 

   スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

2012.04.14     カテゴリ:  Duty-本編- 

   26話 謎の怒り




「でね、聞いてよ。テストの点数がね!」
「また赤点?勘弁してよ。ちゃんと勉強しなって。」
「セナがあたしのとこ、山に連れて行くからだよ!」
「そうやってまた人のせいにする。困った癖だね。17歳なのに心の中はまだガキンチョ?」
「はぁ?文句言うなら車持って来い!」
 先程から2人の背中を追っているが、ずっとこの調子だ。言い合ってはまたケロっとして笑い合って会話をする。私はこの2人が相当仲が良いものと判断した。だが理真はこの男に騙されている。この男は優しいフリをしているのだ。悲しみに明け暮れる理真につけ込むために。これは困難をきたしそうだ。理真はきっとこの男を信用しきっている。私の言葉だけでは男から離れようとはしてくれないだろう。
 それにしても、私はあの男の顔をまだ見ることができていない。今回は私にしては仕事のスピードが遅い。いつもなら顔をはっきりと認識している頃合いなのだが。
「オレンジジュース飲んで頑張って勉強しな。」
「あ、勉強教えてよ。」
「新しい試みだね。オレをフルに活用しようとするとは。」
 この男の声、案外女子が好きそうな明るい声をしている。歌でも歌えば上手いのではないか?
そう思っていた直後に2人が思わぬ方向に曲がった。そこは道ではない。何かの敷地。2人でどうしてこんなところに入るのだ?私は足音を立てずに小走りで角へと向かい、勢いよく曲がったその時。
「さっきから何?学校からコソコソついて来て。」
 茶色の髪の間から、鋭い目をした男が私の前に立ちはだかり、見下ろしていた。


26-1



 嘘だ。私は今まで尾行していてバレたことなど一度もない。なのにこの男は私に気が付いた。一度も後ろを振り返っていないのに!
「なっ夏実!?」
 少し離れた所で私の姿を捉えた理真は、目を大きく開いて驚いていた。しかし私は弁解を考えても、しようとも思ってはいなかった。馬鹿にするような目で見下ろしてくる男を睨み返すことしかできなかったのだ。
 私は全く顔など期待してはいなかった。むしろ彼女たちが言っていた、正面はブサイクという方に賭けていた。しかし…
「貴様、イケメンじゃないか!」
「は?」
 私の負けだ。



「意味分かんない!なんなの!?理真はなんでこの男と一緒にいるの!?」
 私たちをつけて来た夏実を事務所の中へ連れて来たのはいいものの、先程からセナへの暴言がマシンガンのように出てきて止まらない。
「こんな男とか。まぁ、言う通りでろくでもない奴だけどさ。オレ。」
 セナはそれ程感情的になることもなく、ただ不機嫌そうにしているだけだった。私はと言うと、すっかり困り果ててしまってソファーにもたれかかっていた。夏実が来てしまったということは、確実にクラスの女子生徒達にセナの存在がバレてしまうということになる。もう私は終わりだ。どうせ彼氏だとかと広められて、変な目で見られるようになるのだろう。
「ってか何でお前は理真を当然のように連れ込んでるわけ!?」
「…君も分かってると思うけど、理真ちゃんの両親が亡くなって理真ちゃんが困ってたから。」
「嘘だ!お前は理真につけ込んだんだ!」
「君はまるで男のような勢いだ。」
 もう止める気すら起らない。どうにでもなってしまえ。夏実もセナも、どうにでもなってしまえ。
「お前は理真に下心があってここに連れ込んでるんだ!」
「下心ねぇ。オレははっきり言って理真ちゃんを妹だと思って面倒見てるんだけど。一緒に住んでるし。ねぇ、理真ちゃん。」
「一緒に住んでる!?ここで!?貴様!下心しかないじゃないか!」
「違うってば。オレは本当に救いの手を差し伸べただけなんだよ。」
 よりによって、なぜ夏実なのだ。夏実は情報屋として学年では有名だ。まさか学年全体にまで広まるのか!?
「本当に最低な男だね!どうせ何股もかけてるんだろ!?」
「最高は四股。一週間のスケジュールが女だけで終わるって、結構悲しいよ?」
 それは私も初めて聞いた。四股って、お前は本当に最低な男ではないか。
「今は彼女いない。理真ちゃんのお兄ちゃん役で忙しいから。」
「どうせお前は理真が熟してきたら彼女にするつもりだろ!」
「だから違うって。」
「何が違うんだ!こんな汚い部屋でよく言うよ!!!アホ男!」
「あ…頭にキターッ!」
 セナが突然絶叫して、私は思わず腰が抜けそうになった。嘘だろ!?セナがキレてしまったのか!?私はてっきりセナは大人な対応をすると思ったのだが、そうはいかなかったというのか!?セナに目を向けると、じっと夏実を見つめていて、夏実は顔を青くしてセナを睨みつけていた。流石の夏実でもあそこまで絶叫されたら怯えるに決まっている。
「よっこらしょ。まぁ、そこに座って。理真ちゃんもだよ。」
 一体お前はどういう構造になっているのだ?頭にまできた苛立ちは口で「頭にキターッ!」と叫ぶことによって、発散されるという仕組みになっているのか?なぜそれほどまでに涼しい顔に戻っているのだ!?
「どうかした?2人とも座りなよ。」
 彼の感情の起伏に、人間ではないのではないかと夏実に疑われていなければよいのだが。



 広いコンクリートと砂利が敷き詰められた敷地に、車庫と十数個のドラム缶がある。その奥に見えるのは古びて赤茶けた中型の工場だ。錆ついた機械が置いてある工場の出入口付近には、事務所へと繋がるドアがある。その中は外に比べると綺麗だが、そこらじゅうにペットボトルや菓子パンの袋が落ちている。それに床がない。剥き出しのコンクリートなのだ。
 私も初めてここに来た時は驚いた。ましてや、住むなんてもっての外。無理に決まっていると思っていた。けれど今現在、私の家はこの工場。これ程までに人間の適応能力を感じたことは他にない。
 台所でオレンジジュースの缶を開け、透明で欠けていない綺麗なコップを食器棚からそっと手に取ると、勢いよくコップの中にそれを注いだ。私はそれを持ち、台所のドアを開けて2人のいるテーブルへと向かった。
「おい。なんで向こうにもテーブルと椅子があって、こっちにもテーブルと椅子があるんだ?1セットでいいんじゃないのか?」
 そんな素朴な疑問を、夏実はセナに投げかけた。
 私もそう思ったことがある。ここの家はダイニングテーブルが二つある。普段、私とセナが生活している部屋と、台所がある部屋だ。私は彼にそのことに関して尋ねたことがなかった。私も一度聞いてみたかったので助かった。
「台所って、日当たりが悪いんだよね。だからこっちにもう一つ置いたの。ここだと、窓があるから明るいでしょ?」
 待て。ならば台所にあるダイニングテーブルをここに移動すればよかったのではないか?そう思っていると、セナはテーブルの表面を撫で始めた。
「このテーブル、ゴミステーションに捨てられていたとは思えないでしょ?」
 拾って来たのか!?ということは…
「椅子もだよ。」
 夏実は汚いものを見るような目で、テーブルではなくセナを見ている。それは仕方ないと思う。これほどまでに変わっている人間なのだ。不審に思うのは当然のこと。しかしどうやってゴミステーションから工場まで運んで来たのだ?
 絶望と不安で心臓をバクバクさせながら、私は夏実の座っている位置のテーブルにオレンジジュースが入っているコップを置いた。
「えぇっ!?理真ちゃん!それオレが!」
 そうだ。セナが買ってきたオレンジジュースだ。冷蔵庫の中を探してみたが、ハチコウの仕業か、りんごジュースとカフェオレは既に無くなっていた。空のパックを入れて置いて、私とセナを騙そうとしていたのだろうか。私は重量感を期待して持ちあげてみたが、紙の重さしかなかった。そんなハチコウでも一つだけ飲まずにそのまま残して行ったものがある。賞味期限の切れた牛乳だ。アンドロイドなのだから、賞味期限の切れたものから飲んでほしい。なぜわざわざ避けるのだ。セナなら飲んでくれるのに。
 流石に賞味期限の切れた牛乳を夏実に出すことはできない。だから私はセナが買ってくれたオレンジジュースを彼女に出したのだ。
「理真ちゃんのために買ったのに!なんでこんなギャルなんかに!」
「オイ!なんでお前にそんなことを言われなきゃいけないんだ!?」
 またセナと夏実の言い合いが始まる。この2人が話し始めると、円満という言葉が消滅してしまったかのように思える。
 私のために買ったとセナは言った。お茶とコーヒーを同時に押したら、オレンジジュースが出てきた。だから私にくれた。違うのか?彼の言い様だと、私のために始めからオレンジジュースを買ったということになる。
「あたしのために買ってくれたの?やっぱり。」
「えっ…そんな。オレそんなつもりじゃ…。」
 私が冷めた声で彼に言うと、彼はわざとらしく恥ずかしがりながら黒いジャンバーの裾を口に当ててデレデレとし始めた。
「あんた、名前は?」
 基本このような素振りをする男が嫌いな夏実は、セナを睨みつけながら尋ねた。
「佐藤セナ。24歳。昔親父がこの工場を経営してたんだけど、10年前に死んで倒産。借金だけが残って困り果てた、まだ若かったオレの母親は借金をオレに押しつけて他の男のところに行った。オレは住む場所もなくて、父親の残していったこの工場で借金返して生活してるの。母親は他の男との子供と楽しく生活してるみたいだけど、もう全く連絡も取ってない。オレの兄弟が何人いるのかも、もう分からないよ。」
 こんなもの、デタラメだ!こんなにもさらっと嘘を撒き散らしてよかったのか!?佐藤って…そう言えばこの工場の錆付いた看板に『佐藤鉄工所』と書かれていた気がする。そこから取ったのか!?
「…そういうあんたの職業は?」
 これは鋭い質問だ、彼は今、「借金を返して生活している」と言った。借金を返すことができるということは、何かしらの収入源があると言うことだ。まさかここでアンドロイド殺しなどという本当のことを言うはずがない。
 …なんて答えるのだ?セナ…。
「ん?テロリスト。」
「は!?」
 その通りだ。テロリストがもっとも彼の職業に近い。しかしそれは職業の域を越えている。既に犯罪者だ。
「だから気をつけた方がいいよ。下手にオレの存在をバラしたら、オレは君を抹殺するから。」
「全部嘘でしょ?」
「さぁ?一部は本当かもね。だから気をつけて。君、ものすごくおしゃべりそうだから。理真ちゃんと違って。」
 いつの間にか彼の冗談は現実味を帯び始め、本気の脅しへと変わっていた。夏実はオレンジジュースに目をくれることもなく、困ったように俯き、目を泳がせ始めた。
「君、けっこう可愛いのに、背伸びして強がっちゃってさ。理真ちゃんに悪い男でもくっついたと思ったの?馬鹿だねぇ。計画も立てないでつけるなんて素人のすることだよ。つけて来るならもっと覚悟を決めなきゃね。オレ、君みたいな子を見ると、潰したくなっちゃうんだよね。」
 低い声で夏実に言うセナの表情は、不吉な笑みで染まっていた。私はすぐに夏実を助けることができなかった。だからと言って、すぐにセナを止めることもできなかった、セナの目は本気だったのだ。私を助けてくれた、あの日の目ではない。目の前にいる人間が少しでも疑わしい行動を取ったら、すぐにでも息の根を止めてしまおう。そんな殺気が彼から伝わってきた。
「…夏実はあたしの友達だから大丈夫だよ!セナの事情は広まらないように頼むから!」
 どうか伝わってくれ。確かに私は友達がいないと言った。けれど彼女はクラスでも、学校でも唯一私を相手にしてくれる人間だ。
「そんな保障どこにあるの?警察なんて呼ばれたら、ひとたまりもないよ。出て行ってくれる?」
「言われなくても出て行くわよ。」
 夏実は悔しさの滲んだ目でセナを睨みつけるとドアへと大股で歩いて行った。
「あ、そうだ。」
 とぼけたような声でセナは夏実を呼び止めた。
「オレの事情撒き散らしたら君を抹殺するけど、理真ちゃんを困らせたら殺すからね。」
 殺すという彼の言葉が夏実の心に突き刺さった音が、私には聞こえたような気がした。私は事務所から出て行った夏実を追い駆け、セナを1人残して事務所のドアを思い切り閉めた。



「待って夏実!ごめん。セナは本当はあんな酷いことを平気で言うような奴じゃないの。今日は何だか変だったけど、普段は優しいし。」
「正直あそこまでの男だとは思ってなかったよ。でも彼氏ではなかったことに安心した。」
 工場の軒下で夏実は優しく笑った。
「あたしの友達が、理真とあの男が一緒に帰るところを見たって言ってたのよ。それであたし、心配になっちゃってさ。ごめん。つけて来たあたしも悪いよ。」
 こうなる前に上手く私が彼女に説明しておくべきだったのだ。
「でもテロリストなんて嘘でしょ?アイツだったら似合うと思うけど。」
「うん。でも少し近いかな。だけど人を殺したりなんてしてないから大丈夫だよ。」
「分かってる。だってアイツ、意外に律義そうだもん。それにアイツが最後にあたしに吹っかけてきた言葉。」
「え?」
「自分の事情が広まったらあたしを抹殺するだけで済むのに、あたしが理真を困らせたら殺すって、相当理真を妹みたいに可愛がってるんだね。そのくらいがちょうどいいよ。」
 なぜか夏実は嬉しそうに私に言った。そして満面の笑みで私に手を振った。
「また明日ね。あたし、何だかすっきりしたよ。このことは絶対に誰にも言わないから。安心して。」
「うん。バイバイ。」
 私が救われたのは、彼女の心が広かったからかもしれない。



 そっと事務所に戻ると、セナと目が合った。
「怒ってる?怒ってるよね。だってオレ睨まれてるもん。」
「今日のセナ、おかしいよ。」
「…気が狂わない方がおかしいよ。」
「あたしなんかした?」
 私は彼を怒らせるようなことをした覚えはない。ということは、彼が勝手に怒っているのだ。結局彼はおかしな笑みを浮かべたまま、私と口を利こうとはしなかった。



スポンサーサイト
web拍手 by FC2








トラックバック

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
夏実ちゃん、威勢がいいこと(^_^;)
セナ君の存在がバレちゃったので、今後がちょっと心配です。
他のお友達も、興味津々みたいですしね。
次回、どうなるのか楽しみです。

ありがとうございます☆
夏実ちゃんは男兄弟しかいないという設定なので、

男が相手になると、つい兄弟との口調になってしまいます(笑)
ダメな高校生です。

セナ君がなぜか怒っているのですが、
これには深い意味があるんです・・・

そこを楽しんでいただけると、
とても嬉しいです☆

毎回ありがとうございます。
これで私、頑張れますぅ!!!!





プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

ブロマガ購読者向けメールフォーム


検索フォーム
すぴばる
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。