FC2ブログ
アクセスカウンター


お知らせ
最新話→77話 生命と命←NEW! リンスのつぶやき→は、は、は…春休み!


Dutyバナー


--.--.--     カテゴリ:  スポンサー広告 

   スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

2012.03.23     カテゴリ:  Duty-本編- 

   21話 彼の過去




「うんまーい!」
 彼に買ってもらったチョコバナナのクレープを食べながら、私と彼は河川敷の草むらに腰を降ろしていた。遠くで野球をする子供たちの声と、ノックの音が聞こえてくる。ふとセナへと視線を移すと、彼もクレープを買ったはずなのだが、いつの間にか包み紙諸共彼の手の中から消えていた。彼に限って落としたとは考えにくい。しかし今の私にはそんなことはどうでもいいのだ。この甘いクリームのおかげで気分は上々、まるで天国にいるようだ。
「手首、大丈夫なの?さっきから躊躇なく使ってるけど。」
「傷口がね、めっちゃ赤黒いっていうか、紫っていうか。縫った糸が皮膚に喰い込んでたよ。」
「…リアルだね。」
「痛くないから大丈夫だよ。」
 流石のセナも顔を顰めた。私は彼の反応も気にせず、クレープにまたかぶりつく。
「武器庫作ろうと思っててね。」
「は?」
「今回、オレのナイフで理真ちゃんが手首を切っちゃったのもあるんだけど、前々から最低限の武器以外は工場には置いておいちゃいけないなと思ってたんだよね。もうオレ1人じゃないんだし、机の上にナイフが無造作に置いてあるのは無神経だったよね。…ごめんね。」  
「あぁ、ごめん。だけどあたし、これからは触るなって言われたら触らないから。もう大丈夫だよ。」
「いや、これを機に武器庫確保しないと、これからはオレ、面倒くさがってやりそうにないから。」
「オイ。」
 最後のクレープの1口を口の中に入れた時、私は残ったピンクの包み紙を手にしたまま、彼に尋ねた。
「ねぇ、セナ。間違えてたらごめんね。…あたしとセナ、昔ここで遊んだよね。」
 夕方の涼しい風に吹かれながら、セナは凛とした目を私に向けた。
「なんだ。案外忘れてないじゃん。」
「あたしのところ、試すためにここに連れて来たの?」
「違うよ。…ここが一番安心するから。オレが幸せだった頃の思い出の場所。」
「セナは彼女だっているし、あたしに比べたら幸せなんじゃないの?」
 セナが夕日に目を向けたまま、しばらく黙り込んだ。私は夕日の光りによって目に映し出されるようになってしまった残像を振り払うことに一生懸命で、あまり彼に神経を向けていなかった。
「…別れたんだよ。ついこの間。」
 彼の言葉に私の全神経が彼に集中した。ドライアイの上、まだ残像が残っている目を大きく見開き、彼へと向けた。
「なんで!?嘘でしょ!?」
「本当だよ。」
 彼は私の反応を面白がっているようで、笑っている。
 なぜだ?彼は私に彼女がいると初めて口にしたとき、あれ程までにのろけていたではないか。好き過ぎてもう何も考えられないと言うような顔をして、あれだけ私を腹立たせていたのに、どうしてだ?
 もしや…私が原因か?
「あたしのせい!?あたしがセナと一緒にいたから!?工場に一緒に住んでるのがばれたの!?」
「違うよ。オレが自分で別れることを決めたの。」
「はぁ?」
「…理真ちゃんはさ、オレは彼女がいて幸せだって、羨ましがってたでしょ?でもオレ自身、理真ちゃんに誇れるほど幸せだとは思ってないし、幸せにはなれないから。…オレが胸を張って幸せだって言えないのに、そんな遊びみたいな関係に本気でいる彼女を縛り付けておくのは、かわいそうだと思ったから。」
 違う。セナは遊びで彼女と付き合っていたはずがない。彼の性格なら真面目に、彼女を大切にしてきたはずだ。
「どっちにしろ、オレは彼女を幸せにはできなかったんだよ。」
「え?」
「だってオレはアンドロイドだよ?人間じゃない。」
 私は納得した。彼自身がアンドロイドということが、彼の全ての幸せを邪魔したのだ。こうして考えてみれば、彼が彼女に自分がアンドロイドだということを隠してきた理由も頷ける。自分がアンドロイドということは、彼にとって唯一のコンプレックスだったのだ。
「でも薄々気が付いてたみたいなんだよね。彼女はどんどん大人っぽくなっていくのに、オレは全く変わらなかったから。」
「セナ、ちゃんと話せばきっと分かってくれるよ。より戻した方がいいって。」
「もういいんだよ。それにもう暴露してきちゃったから。オレはアンドロイドだって。」
「…それで、何か言われた?」
 セナはただ笑うだけだった。もはや、どう慰めてあげればいいのか分からなかった。私のような恋愛未熟者が慰めていいのか、余計にセナを落ち込ませそうで怖い。
「あ、そうだ。包み紙、食べるからちょうだい。」
「…は?」
 落ち込み過ぎて暴食に走ってしまったのだろうか。しかし紙を食べるのか!?
「ここら辺、ゴミ箱ないでしょ?ほら。処理してあげる。」
 そう言えば、アンドロイドの胃はブラックホールだと言っていた。
「本当に食べれるの?」
「千切ればね。でもオレ、よく食べてるから慣れてるよ。プラスチックだったりすると少し大変だけど。」
「プラスチックも食べるのか!?」
「飲み込む時が大変なんだよね。」
 渋々彼にクレープの包み紙を渡すと、彼はそれを器用に千切り、口の中に入れガムのようにひたすら噛み始めた。
「天然ガム。」
 そう言って夕日を見つめている彼を見て、私は思わずため息をついた。こっちは同情しているというのに、当の本人は全く落ち込んではいないようだ。
「オレ、落ち込んでないよ。」
 ほら、やっぱり。
あれだけのろけて、どうしようもない程だったというのに、よく落ち込まずにいられるものだ。
「だって彼女はオレから解放されたんだもん。祝ってあげなきゃ。」
「ちょっと意味が分からないんだけど…。」
「彼女は幸せになるチャンスを得たんだよ。オレと一緒にいたんじゃ、幸せにはなれない。あの子は理真ちゃんと同じように、必ず幸せにならなきゃいけないんだよ。」
「あたしと同じって?」
「オレの彼女は理真ちゃんの姉貴分だから。」
 あまりにも想像を絶する意味の分からなさに、私は思わず黙り込んだ。本当は何か言わなければならないのだろうけれど、もう言葉が出て来ない。彼が言っている根本的なところから分からないのだから。
いつもなら至って真面目に、分かりやすく説明してくれるセナ。しかし今日ははっきり言って意味不明だ。やはり彼の知らないところで、彼の思考回路は心のオアシスを失った影響を受けているのかもしれない。

―――あ…アンドロイドなのに、感情に打ちのめされちゃったのか…。
 
既に人間の失恋した男のようになっているセナを、私は初めて弟のように思えた。しかしそれもつかの間だった。
 紙を飲み込んだ彼は、そっと言葉を発した。
「有里香って名前だったの。」
 何だ何だ何だ!?これから思い出話が始まるのか!?私は早く帰りたくて堪らない気分だった。しかし帰ったとしても、彼と私は同居している。どっちにしろ、聞かなければならない。
「…聞きたくない?」
 察したのか、彼は悲哀に満ちた目をちらりと私に向けた。
「そんなことないよ。聞かせて。」
 私は女優になった。満面の笑みで彼を受け止めてあげられるような女へと化けた。内心、逃げ出したい気持ちで溢れ返っていたが。しかし私は知ることになる。彼と彼女の悲しい過去を。



河川敷 夕日




スポンサーサイト
web拍手 by FC2








トラックバック

この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)
ウチはクレープは
いちご生クリーム派(笑)←

そうだよねw

クレープ大好きだもんねw




プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

ブロマガ購読者向けメールフォーム


検索フォーム
すぴばる
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。