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2012.03.20     カテゴリ:  Duty-本編- 

   20話 正義感


 医者から包帯を解かれ、現れたのは紫とも赤とも黒とも言えない、生乾きの傷跡だった。
「うぇ。」
 小声で私は呟いた。医者は私の左手首の傷からふと私の顔へと目を移す。私と医者の視線がぶつかる。
「元気になったみたいだね。」
 若い医者に言われ、私は薄く笑った。だが私の意識は左手首の生乾きの傷へと集中してしまっている。もはや糸は盛り上がった皮膚や肉に喰い込み、どう見ても簡単に取れる様子ではない。すると医者がハサミとピンセットを手にした。思わず体に力が入る。糸を取る瞬間を見たい半面、怖くて見たくないという気持ちもある。
 だが私はやはり臆病だった。顔を左手首から逸らし、強く目を瞑った。何か引っ張られているような感覚と、糸の抜ける感覚で一瞬「あれ?」と思った。私の脳に痛みは伝わって来ない。1ミリも。麻酔もしていないのにどうしてだろう。やはり医者が上手いのだろうか?セナはこの医者を嫌っていたようだが、腕は確かなようだ。



「また何かあったら来てください。」
 5本の糸が無事に抜けると、私の左手首にはカットバンが貼られ、そして治療は終わった。
「ありがとうございました。」
 そう言ってスクールバックを持ち、脱いでいたブレザーを着ようとした時だった。
「もうしないようにね。」
 医者は私に言う。私は銀色に光る皿の上にある、血の塊が付いた黒い糸を見て答えた。
「もうしません。失礼します。」
 私が馬鹿だったのだ。手首なんて切るものじゃない。白い廊下を歩きながらカットバンの上からそっと傷のラインを撫でた。



 大きな待合室へと向かっていると、白い壁に寄り掛かるセナの姿が目に入った。彼は確か待合室の椅子に座っていたはずなのだが…。私は足を止め、彼をじっと見つめた。セナは私に気が付いていないようで、呆然と何かを見つめている。


セナ 病院



静かにその視線がどこに注がれているのか追ってみると、そこには二つに髪を結った小さな女の子がお母さんと座っていた。ただの親子だと思うのだが、セナはその2人をじっと見つめている。その顔は言葉では言い表せない程に悲しそうで、複雑だった。私には彼が今何を考えているのか分からない。私が彼の人格を作り出したというのに、なぜ私は彼の気持ちが分からないのだろう。



全く分からない。セナのくせに難しそうな顔をして一点だけを見つめている。次第に腹が立ってきた。セナは馬鹿なことを言ってヘラヘラ笑っていればいいのだ。しかし今は何かを考えている。そんな顔もできるのに、どうして私の前ではふざけるのだ?私にはセナが性格を使い分けているようにしか見えない。真剣にものを考える時は真面目な顔をして、私にはふざけて見せる。…私には真面目に向き合う価値がないというのか?
「セナ!!」
 そう叫んだと同時にセナが目を丸くして、私に顔を向けた。
「お嬢、もうお帰りになっていたのですか!」
 ほら。またふざける。私は呆れ顔で背の高い彼へと近づいた。
「何でここに突っ立ってるの?待合室にいればよかったのに。」
「いやぁ。…ねぇ。」
 何やら気まずそうに彼は待合室のテレビへと目をちらちら動かした。
「ドラマの再放送にチャンネル変えたらさ、なんか思った以上にアレだったんだ。」
「アレ?」
「そうアレ。」
「アレって何?」
「やめてよ。オレ下ネタ嫌いなんだから。」
 あぁ。そういう方向の“アレ”か。だがセナが下ネタ嫌いだと?嘘を言うのもいい加減にしろ。お前自身下ネタみたいな生き方をしてきたんだろうが。
「で、何となくいにくくなったから、待合室から逃げて来た。」
「…ということはチャンネルはそのままだと?」
 なんて無責任な奴だ。私はスクールバックを肩に掛け直し、セナの腕を引いて待合室へと向かおうとした。待合室にいる人々を救わなければという、一種の正義感だった。だがセナは全く動こうとはしない。私は思わず彼へと振り返り、睨みつけた。
「何してんの!」
「いや。ちょっとさ。」
「は?」
 また無表情で一点を見つめ始めたセナ。かと思うと、表情を緩ませて優しく笑い出した。
「何笑ってんの?それに、さっきも思ったんだけど、どこ見てるの?」
「…あの子。」
 そう言った彼の視線の先には、やはりあの二つ結いの女の子と母親がいた。2人は私たちの存在にも、私たちに見られていることにも気づいてはいないようだった。確かに見ていて和むことができる。幸せそうだし、不幸な私なんかと一緒にいるよりもよっぽど充実しているような、幸せな感覚が得られる。だが彼から発せられた言葉は意外なものだった。
「あの子、小さい頃の理真ちゃんによく似てるんだよね。」
「え?」
「髪の感じとか、頬とか…笑った時の表情とか。」
 なぜ今ここで昔の私が出てくるのだ?彼の見つめている少女と昔の私は全く似ていないと思うのだが。しかし彼は私にそれ以外のことを考える時間さえ与えてはくれなかった。
「そうだ。遊びに行こうよ。」
「え?」
「おごってあげるから。」
 その言葉に心を奪われた私は、彼に彼女がいるという事実も、待合室のテレビに映し出されているドラマから人々を救うことも忘れて、彼と病院を出てしまった。テレビのチャンネルを変えることを忘れたことに気がついたのは、その日の夜11時を過ぎてのことだった。                    
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いや、そこ下ネタととらえるかwwwww

さすがセナくん(笑)


もう一つ、

セナ君伝説が増えた瞬間でしたw


困った奴です☆




プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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