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2012.11.10     カテゴリ:  Duty-本編- 

   48話 無責任



 やっとの思いで、ハチコウのアパートがある古びた住宅街を走っていると、後ろからクラクションを鳴らされた。振り返ると、そこには自分の愛車があった。
 ふと自分の愛車の助手席に理真を乗せて、朝、学校に送っていたことを思い出す。元カノを乗せてドライブをしたり、買い物をしたりした回数の方が多いはずなのに、自分の車を見て思い出すのは、やはり理真なのだ。
 自分がいつも乗っている運転席から顔を出し、セナに声を掛けたのは、不安そうな表情をしたハチコウだった。
「セナ!乗れ!もう全部積んだ!」
 セナは助手席へと駆け寄り、勢いよくドアを開けて車の中へと乗り込んだ。
「セナ……大丈夫か?」
「あぁ、大丈夫」
 助手席の椅子にどさりと座ったセナは、大きく息を吐き、身体全体から力を抜いた。
「どうする?理真がどこにいるのかも分からないんだぜ?追う方法もねぇよ」
「分かってるよ……」
「どうすんだよ!急がねぇと!」
「分かってるって言ってるだろ!!!」
 セナの怒鳴り声が車内に響いた。その声と鋭い瞳に、ハチコウは金縛りに遭ったかのように固まった。
「お願い……静かにして。オレも考えてるんだよ。アイツらが理真ちゃんを連れて行きそうな場所……」
 対照的な弱々しい声でセナは言い、そして静かに頭を抱えた。

 ……車のエンジン音だけが、沈黙を繋いでいる。

「オレを誘き寄せるために、有利な場所……。広い場所?いや違う。…簡単にオレを誘き寄せる方法……もっと簡単に…確実にオレが行けるような方法……」
 セナはぶつぶつと独り言を呟いている。
「……セナ?…大丈夫か?」
 ハチコウは彼が心配になり、セナの顔を覗き込んだ。だが心配する必要などなかった。自分と同じ欠陥品であるものの、やはり頭脳型の彼が答えを導き出すのは速かった。
「……ある意味理真ちゃんをフルに活用するんだね…」
「は?……何言ってんだ?」
 セナは顔を上げて、ハチコウに微笑んだ。
「奴らはオレに会いたくてうずうずしてるんだ。なるべく時間をかけずに、オレを来させたいんだよ」
「……で?なんで理真を活用して、それでお前を速く来させられるんだよ。いくら一緒に暮らしてるからって、テレパシーなんてものはないだろ?」
「正しく言えば、活用するものは“理真ちゃん自身”ではない」
「“理真自身”じゃない?」
 彼は微笑んでいるはずなのだが、目はなぜか悲しそうだった。ハチコウはそれに気が付いたが、自分の余計な言葉が彼を焦らせたり、苛立たせたりするのが怖かった。また怒鳴られるのが怖かったわけではない。彼の心をこれ以上掻き乱すのが怖かったのだ。
「理真ちゃん自身は、オレを逃げられない状況に陥れるための人質。オレを誘き寄せるための道具は……携帯電話」
 セナは自分の携帯電話をポケットから取り出した。
「け…携帯?そ…そんなものかよ?」
「世の中便利になったからね。オレが理真ちゃんと親しいことを知って、理真ちゃんの携帯の電話帳を調べればオレの番号が分かると思ったんだよ。でもどうしてかね。本部だってそれなりの組織なんだから、オレの携帯の番号だって割り出せたはずなんだけど。……もし奴らの後ろ盾が製造者なら、ちゃんとオレに電話をかける時のことも考えたんだろうね」
「は?」
 ハチコウはもはや、話についていくことができない。
「オレは5年間も三流アンドロイドの中に潜伏してたから、用心深いことくらい推測はしてたはずでしょ?もしオレの携帯電話に知らない番号から電話がかかってきたら……普通はオレが怪しがって出ないと思うんじゃない?」
「まぁ、そうだな。実際お前、公衆電話も出ねぇよな」
「早く呼び出したいのに、オレが着信拒否なんてしちゃったら、早くも何も、機会を失ってまたオレを見失うでしょ?そこで理真ちゃんの携帯電話だよ。理真ちゃんの番号が表示されれば、オレは疑いもなく出る」
「……マジでフルに活用だな…。」
「セナって名前には、向こうも驚いてると思うよ。オレの型版はDuty。セナって名付けたのは有里香だから。……もしオレがセナって呼ばれてることに気付いていなかったのなら、もう少し手こずってたと思うけど、理真ちゃんが奴のことをオレだと思って“セナ”って呼んだと思うから、勘づいただろうね。」
「……でも、本当に電話なんてかかってくるのか?オレと同じ戦闘型の奴らが、そんなことできるのかよ。オレだったら絶対にできねぇぞ?」
「見てな。奴らの後ろ盾の実力だよ」
 そう言った瞬間、まるで見計らったかのように、セナの手の中にある携帯電話が鳴り響いた。
「り…理真からだぞ!」
 セナの携帯電話の画面に表示されていたのは理真の名前だったのだ。セナの予測通りのことが目の前で起こり、ハチコウは半ば仰天した。
セナは無表情で携帯電話を耳に当てた。
「もしもし?セナ?」
 ハチコウは拍子抜けした。携帯電話の向こう側から聞こえてきたのは、いつもの理真の声だったのだ。電話をかけてくるのは、奴ら本人ではなかったのか?もしや理真は脅されて、無理矢理セナに電話をかけさせられているのだろうか。何はともあれ、理真の声を聞くことができて安心した。それにしても、理真の声は落ち着いている。あの小心者の理真ならば、パニックに陥ると思うのだが……。
 しかしセナは理真の声を聞いて、安堵の表情を浮かべることはなかった。それどころか目を鋭くさせ、低い声で思いもよらないことを口にした。
「……理真ちゃんに代わってくれる?」



48-1



 セナの言動に、ハチコウは唖然とした。セナは何を言っているのだ?今セナが話しているのは理真だというのに……。
 電話の向こうにいる理真も流石に驚いたのか、しばらく何も言わなかった。しかし次に聞こえてきた声は、理真のものではなかった。
『なぜ分かった?』
 男の声だった。突然聞こえてきた男の声に、セナは驚くこともなく、淡々と答えた。
「理真ちゃんの声の周波数と違ってたから。若干ね」
『頭脳型らしいことをするんだな。お前も』
「オレはお前とゴチャゴチャ話すつもりなんてないんだよ。理真ちゃんに携帯、代わってくれる?お前のその汚い手の中にある携帯、理真ちゃんのでしょ?」
『悪いがそれはできない』
 間髪を入れずにセナは電話の向こう側に話す。冷静に頭を働かせて、セナは対応していた。
「……どうして理真ちゃんを巻き込んだの?いつから本部は道徳を捨てたの?」
『人間にアンドロイドの存在を知られてはいけないという考えは、もう必要ない。日本では事実上、数万人の人間がアンドロイドの存在を知っている。アンドロイド製造に関わる人間。それらを取り巻く家族、血縁者。アンドロイドの失態の被害にあった人間。社会全体に広まるのも時間の問題だ。この女もアンドロイドの正体を知っている人間の1人だ。なによりこの女は、お前の正体を知っている』
「その子はオレがアンドロイドだってことしか知らない。その子に問いただしても、お前は何1つとして情報は掴めないよ。だから返して」
 理真を巻き込んで良いはずがない。理真の精神に圧しかかる負担を、奴らは全く考えてはいないのか?いや、早く手を打とうとしなかった自分自身が悪いのか?理真がこんな目に遭ったのは、自分のせいなのか……?
『この女を返したら、お前は5年前のようにして逃げるだろう?……逃がすわけにはいかない』
 セナは小さく舌打ちをした。
「どこにいるの?オレが行けば、お前はそれで納得するんでしょ?」
『……ビルだ』
「どこのビル?」
『駅の東口近くの、ビジネス街で1番大きいビルの17階だ』
 フロアの指定に、セナは血の気が引いていく気がした。
「ビジネス街のビルの1フロア……?ふざけてるの?」
 人間がいる。人間が近くにいるというのに、1フロアした準備せずに奴らは争おうとしているのか?
『お前の大事な尻尾を捕まえた以上、1フロアで充分だ。お前がもし他のフロアに逃げ込んだら、他の人間まで巻き込まれることになるだろうけどな。まぁ、逃げないように努力しろ』
 製造者の側近、ましてや大量のアンドロイドの中の、ランキングNo.1の口から放たれて良いような言葉ではない。人間の命に対する無責任極まりない発言だ。
「お前は……人間の命をなんだと思ってるんだ……」
 唇を震わせながら呟くセナを見て、ハチコウは顔を顰め、静かにその様子を見守っていた。
『全部お前が何とかすればいい事だろ?逃げなければいい。……大きな影響が出る前に、お前は死ねばいいんだ』
「……オレが行くまで、理真ちゃんには半径3メートル以内近付かないでくれる?もし理真ちゃんに何かしたら、世の中にアンドロイドがいるって、言いふらすからね。流石にテレビや新聞に取り上げられるのは、本部側としても困るでしょ?世間から政府が批判食らって、証拠隠滅のためにアンドロイド全員焼却処分になるかもしれないしね」
 隣から聞こえた会話の内容に、ハチコウは目を丸くした。しかしセナは冗談ではなく、本気の目をしていた。
『そしたらお前が真っ先に焼却処分される。お前も死ぬぞ』
「オレは別にどうなったっていいんだよ。理真ちゃんが無事であればね。オレとの約束、守ってね。オレもお前との約束守るから」
 セナはうっすらと笑みを浮かべ、携帯電話の通話を切った。大きく息を吐き、そして運転席にいるハチコウに囁いた。
「駅の東口近くのビジネス街で1番大きいビルだって」
「そんな所に理真を連れ込んだのか!?」
「……オレを完璧に潰すつもりなんだ」
 人間が近くにいる中での争い。セナは本部のアンドロイドが、ここまで人間のことを考えていない野郎共だとは思ってもいなかった。
「ハチコウ、車出して」
「何か戦略とか考えなくていいのかよ!」
「大丈夫。向こうに着いて、そのビルを見たら何か思いつくかもしれないから」
 それでもハチコウは車を発進させようとはしなかった。セナはそんなハチコウに優しく微笑んだ。
「奴の望み通り行ってやろうよ、ハチコウ。理真ちゃん、きっと泣いてるから」
 そう口にしたセナの瞳は、先程の鋭さとは違い、使命感のようなものが感じ取られた。恐怖に支配され、自分自身をコントロールできなくなっている様子はない。どうしてそこまでいつも通りに近い精神状態でいられるのだ?こんなにも追い込まれた状況にあるというのに……。
 ……そうか。コイツはある1つのことしか考えていないから、ここまで洞察力を保てるのか。
ハチコウの中で、今までモヤモヤしていたものが、一気に晴れた気がした。




そして彼は……













確信した。






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プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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