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2013.06.02  
カテゴリ:《 Duty-本編- 》
  75話 通せんぼ

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2013.06.02     カテゴリ:  Duty-本編- 

   75話 通せんぼ



 辛うじて走っていた私の足が、ぽっきり折れてしまったような気がした。上半身が悪寒に襲われ、思わず大通りの歩道に膝を抱えて座り込んだ。
「お、おい! 大丈夫か!?」
 私のすぐ前方を走っていたハチコウが、座り込んだ私に驚いて引き返してきた。
「お前……顔が真っ青だぞ。……気持ち悪いのか?」
 口を僅かに開き、その隙間から空気を吸う。目眩と吐き気がして、ハチコウの問いに頷くこともきでなかった。セナがいるビルの周りには、ビルからの避難者や野次馬でごった返してしまい、ハチコウはやむなく横付けしていた車を近くの有料駐車場に止めた。ハチコウと2人で駐車場からセナが残っているビルに向かっている途中、私は気持ちが悪くなったのだ。
「頑張れ。あと少しだ」
 ハチコウが私の手を引く。自分の力では立ち上がれず、ハチコウに引っ張り上げてもらって、やっと立ち上がった。
「ゆっくりでいい。走るのはやめよう」
 そう言って、ハチコウは私の手を離した。ハチコウの大きな瞳は、なぜかいつもより大きく見えて、瞳孔が開ききっているような気がした。
 静かに頷いて、一歩一歩、歩き出す。たった200メートルほどの距離が、ものすごく遠いように感じ、まるで永遠に終わることのない旅をしているようだった。

 ビルの前には、何十人もの人が集まっていた。先程、車内から見ていた時よりも、一段と野次馬が増えている。ただでさえ気持ちが悪いのに、次は人の数に酔う。自分の目が勝手に人から人へと目移りしていく。ビルの向かいにある道路には、パトカーが5、6台止まっており、階段を上がったビルの入口の付近に2人の警察官と1人の警備員が話をしていた。
「黒いジャンバーを着た茶髪の男が、突然銃を手にして入って来たんです。僕は人質にされて、死にたくなかったらここから出ろと、エントランスで銃を天井に向けて撃って、そう言ったんです。それで……」
 その後は聞こえなかった。黒いジャンバー……きっとセナのことだ。死にたくなかったらここから出ろ。セナが本当にそんなことを言ったのか?セナが人間を傷つけるようなアンドロイドではないことくらい、私は知っている。もしかして、私を助けるために……?
 ただただ、ビルの前で立ち尽くす。何が起きているのか……まだ夢のようで、身体がフワフワとしている。
「おい! 理真! 本当に大丈夫か?」
 ハチコウがぼうっとしていた私を心配して振り返った。
「警察がいる……。くそ……」
 ハチコウはそのまま人の多いビルの入口へと人をかき分けて入って行く。
「理真!お前もこっちに来い!」
 人間に揉みくちゃにされながら、ハチコウは私へと振り返って叫ぶ。「そんなところになんて、行けないよ」と返事をすることもできなかった。胃がきりきりして、気持ち悪さが増していく。
「……早く!」
 私の体調が徐々に悪化していることを感じつつ、ハチコウは困ったように私を急かす。最後の力を振り絞るようにして、私は人混みの中に飛び込んだ。怒りをも込めるように、他人の身体を押し退ける。グリーンのパーカーを着たハチコウの背中を追う。必死に。狂ったように。
 やっとのこと人混みの最前列まで来た。しかし何人もの警察官が両手を大きく広げ、ビルの中に入ることができないよう、通せんぼしている。
 ハチコウはそんなことに構いもせず、目の前にいる人間が警察官だというのに、今まで通り一般人を押し退けるようにして、警察官の肩に手を乗せた。
「駄目だ! ここは立ち入り禁止だ!」
「あぁ!? 仲間が中にいるんだよ!」
 ハチコウの背中を見つめながら、私は警察官とハチコウの会話を聞いていた。
「政府の要人がいらっしゃる! だからここは立ち入り禁止だ!」
 政府の要人?要人がなぜこんな事件が勃発している危険なビルに来るのだ?しかも突然。
 ふとそんなことを考え始めようとした時、後ろから強い力で背中を押され、ハチコウにぶつかった。
「理真? おい、大丈夫か!?」
 頭がぼうっとして、視界がところどころ暗くなる。顔面が麻痺する。自分がどこを向いているのか分からない。そうだ。あの感覚に似ている。お父さんとお母さんが事故に遭ったことを知らされ、美華子叔母さんの旦那さんの車に乗って病院に向かっていた時。あの時の私の目は、沢山のものを見ていたが、脳は何一つ見えてはいなかった。今もそうだ。目が得る大量の情報は、何一つ脳には伝わっていない。
「こっちだ!」
 ハチコウに再び手を引かれ。ハチコウの隣へと狭い中移動する。
「いいから入れてくれ! 中にまだ人が残ってるんだよ!」
「もう残っていない! さっさと帰りなさい!」
 中年の警察官がハチコウに向かって怒鳴りつける。私の死んだ瞳は自然とビルの入口へとさまよう。
 誰も残っていないはずがない。セナはまだビルの中に残っているのだ。
「ちょっと待ってくれよ! 頼むから入れてくれ!」
 ついにハチコウと警察官はつかみ合いになってしまった。その光景に焦りを感じた私の視界に、あるものが入った。警察官の身体で今まで見えなかったビルのエントランスが、ハチコウがつかみかかったことによって見えたのだ。先程私が見たエントランスとは思えないほど、ビルの1階は荒れ果てていた。大理石は黒ずみ、ガラスの破片が散乱していた。そのエントランスの左側の突き当たり、ちょうど壁の真ん中に、黒いジャンバーを着たセナが寄りかかっているのが見えた。
 心臓が大きく跳ね上がり、突然目が覚めたかのように頭の中がはっきりとした。
「セナ!!!」
 大声で彼の名前を叫ぶ。すると隣で警察官をつかんでいたハチコウが私へと顔を向けて、唖然とした。きっとハチコウの力が緩んだのだろう。警察官はその隙にハチコウを人混みの中へと押し込んだ。
「君! 公務執行妨害だぞ!」
 私はハチコウに気を取られている警察官の脇を通って、ビルの中へと侵入しようとした。しかしそれに警察官は気付き、私の前に大きな腕を広げた。通せんぼする中年の警察官を見上げ、私は思い切り睨みつけた。力ずくでも警察官を押し退けてやると、警察官の身体に体当たりをする。
「理真! 何やってんだ!!」
 私より後方へ下がってしまったハチコウは、必死に私の手をつかもうと、人混みの中から手を伸ばしていた。そんなことに構ってはいられない。セナがすぐそこにいるのだ。
 ビルの中に入りたかった私は、あることを思いついた。私は人混みの中で屈み込み、警察官の足元から抜け出した。
「ちょっと君!」
 足元から潜り抜けた私に、警察官は目を見開いて捕まえようとする。しかしハチコウが私を追おうとして人混みの中から再び前へと出て来て、警察官はそちらの対応に追われた。
 ビルの中へと向かう。
「理真! 1人で行くな!!」
 ハチコウの声が遠くで聞こえてきたが、私は止まらなかった。



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プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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