アクセスカウンター


お知らせ
最新話→77話 生命と命←NEW! リンスのつぶやき→は、は、は…春休み!


Dutyバナー


 全4ページ

--.--.--     カテゴリ:  スポンサー広告 

   スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。
web拍手 by FC2

2012.11.14     カテゴリ:  Duty-本編- 

   49話 恩と愛




「狙撃銃はもう必要ないね」
 セナは後部座席に積んであるハチコウが持ってきた武器に目をやり、物色していた。彼の一番の相棒としてここ5年間、活躍してきたのは狙撃銃だった。しかしもう、それはおそらく使うことはできないだろう。
……実際に奴と会わなければならないのだから。
「子榴弾は必要そうだね。あとは…銃弾……」
 ハチコウは車を運転しながら、セナにちらりと目を向けた。
「……本当にやるつもりなのか?」
「やらないでどうするのさ。理真ちゃん助けないで見捨てろって言うの?」
 理真を見捨てろなんてとんでもないと、ハチコウは首を横に振った。ハチコウにとって理真は妹も同然だ。同じくセナに助けられ、セナに面倒を見てもらっている。
今思えば、セナがいたからこそ自分も理真も助けられ、生きることに前向きになれた。同じようなセナを慕う妹だと思っているというのに、見捨てるなんてことができるはずがない。
「……心配する必要なんてないよ。理真ちゃんはオレがしっかり連れて来るから」
「オレが心配してるのはお前のことだ」
「オレは大丈夫だよ。言っておくけど、オレはあの有名なデストロイドだよ?」
 セナは笑った。だが焦りと不安はその笑顔では隠しきれず、苦笑いになる。次第に彼は無表情になり、頭を掻き乱し始めた。
セナは不安を振り払って、効果的な戦略を考えようとしているのだ。
「……大丈夫だ。セナ、落ち着いて考えろ」
 だらかハチコウにはそれくらいのことしか、彼に声を掛けることができなかった。
ハンドルを左に切り、車を寄せたのは、最近建築されたばかりの高層ビルだった。
「ここらで一番デカいって言ったら、きっとこのビルだな」
「……総合商社が入ってるみたいだね」
 セナは助手席の窓からビルの入口を見て、目を細めた。
「警備員が2人……。中にいる人、多そうだね」
 ズボンのベルトに黒い銃を挟み、彼は目を閉じて笑った。
「さてと、行ってくるかな。……わがままで童顔の理真ちゃんを救出しに」
「待て、セナ」
 ハチコウに言われ、セナはドアを開けようとした手を止めた。
「お前に……1つだけ聞きたいことがある」
 セナはただ黙ってハチコウから目線を逸らした。理真を何とか助けたいという焦燥に駆られているというのに、なぜハチコウは止めるのか。今の彼には、理真を助けようという自分の行動を妨げるものは全て敵だった。
ハチコウはセナのいらついた様子を確認すると、自分自身も目線を下に下ろし、車のアクセルを見つめて話し出した。
「お前、理真を拾った時、この子には恩があるって言ってたよな?」
「……そうだね」
 小さくセナは答え、何回か頷いた。その通りだ。間違いなどない。
「笑顔と人格をくれたって、こうやってオレに車の中で言ってたよな?……だけどセナ…」
 ……嫌な予感がした。
「それは本当に……恩だったのか?」
「……どういうこと?」
 逸らしていた目線を、セナは徐々にハチコウへと移した。アクセルに視線を下ろしていたハチコウだったが、視界の隅でセナに見られる気配はビリビリと伝わってきた。
「お前はいつも理真を心配して見守ってた。……だけどその目は異常だった」
「…え?……何が言いたいのさ。オレは欠陥品だよ?異常であることが正常なんだよ?……確かにオレは欠陥品なのに、理真ちゃんと一緒にいたのはまずかったかもしれない。一緒にいたから、こんなことになっちゃったんだから。……でもオレは理真ちゃんに恩返しがしたくて今まで一緒にいたんだ」
「違う。それは恩じゃない」
 断言するようにハチコウは言った。
「……愛だったんじゃないのか」
 ハチコウの言葉に、セナは馬鹿にするように鼻で笑った。
「何言ってるの?オレはアンドロイドなんだよ?殺人鬼だよ?心だってない……デストロイドだよ?欠陥品なのに」
 アンドロイドは人間に作られた産物だ。そんな彼らが……人を愛せるはずがない。
「じゃ、今までのことはどう説明するんだよ!明らかに恩の域を越えてるんだよ!」
 ハチコウはセナに向かって怒鳴り声を上げた。
「お前が理真にアンドロイドだって教えたのは何でだ!?有里香と突然別れたのは何でだ!?理真が好きになったからだろ!?」
 好き放題に言うにも程がある。焦燥感が再び蘇り、セナは頭に血が上った。
「憶測でものを言うのはやめな!ハチコウ!」
 ハチコウを封じようとセナは彼を睨んだが、それでも彼は止まらなかった。
「んじゃ、どうやって説明するんだよ!お前の理真への異常な優しさは!自分の心も身体も欠陥品で、異常だからって言い逃れるのか!?理真に対して真剣に向き合ってきた思いも、欠陥品の上に成り立ってたって、お前は人に言えるのか!?こういう時に限って、オレは心がないからって言い張るのか!?……じゃ、理真は今まで欠陥品のお前に振り回されてたんだな」
 違う。ハチコウは間違っている。理真と向き合う時は、自分が欠陥品であることなんて関係なかったし、自分が欠陥品だということを自覚することもなかった。
1体のアンドロイドとしてではない。1人の人間として、理真と向き合っていた。
「もしお前が、自分に人を愛する心もないって言い張るのなら、理真を助けに行くのはやめろ。……理真をただ拾った人間としか思っていない奴が、助けに行けるはずがない。無駄死にするだけだぞ。それに理真がかわいそうだ。お前の心を作ったのは理真なのに」
 ハチコウはいつも、セナの「オレには心なんてない」という口癖が嫌いだった。この期に及んでまで、そんなものは聞きたくはない。
彼らアンドロイドは、人間に作られた産物であって、人を愛せるはずがないのなら……理真自身は彼に……愛されてはいなかったのだろうか……?



セナはもう1度、自分が実行しようとしていることの危険性を考えた。
もしかしたら……もしかしたら、死ぬかもしれない―――。
彼が理真をただの人間としか思っていないとするならば、これほどまでに大きな壁は乗り越えられない。
 ハチコウの言う通り、無駄死にするだけだ……。
「……ハチコウは、あれだけオレと一緒にいたのに……今まで気付かなかったの?」
 セナは口角を上げて笑い出した。予想もしていなかったセナの笑い出すという反応に、開いた口が塞がらない。
何が気付かなかったというのだ……?何がそれほどまでに面白い……?
「鈍感にも程があるよね。理真ちゃんも、ハチコウも」
「……どういうことだよ」
 ハチコウが尋ねたにも関わらず、セナは助手席側のドアを開けて車内から出た。歩道を歩くサラリーマンたちは、そんな彼には目もくれず、前へと歩いて行く。
 運転席から大きな目を見開いているハチコウに、セナは背を向けたまま小さく言った。
「オレはいくら親が死んだからって、誰でも拾うほど優しくはないってことだよ。……初めから恩なんてどうでもよかったんだ」
 その言葉はあることを意味していた。ハチコウにもそれが理解できた。しかしセナは念を押し、噛み砕いてもう1度答えた。
「恩じゃない……愛だよ」
 ハチコウへと振り返ってセナは笑みを零した。
初めてだったかもしれない。セナの心の奥深くの気持ちを聞いたのは。思わず笑みが零れた。ハチコウには、セナは肩の荷が下りたかのように、すっきりした顔をしているように見えた。
 ……もしかしたら、ずっとハチコウに自分の気持ちを気付いてほしかったのかもしれない。勿論、理真自身にも……。
 ……彼は待っていたのかもしれない。今までの彼の気持ちを考えると、胸が痛い。
一体セナはどんな思いで、理真と一緒に過ごして来たのだろう。
「……奴らから理真を助けたら、帰って来るのか?それとも……」
 奴らを潰すのか?ハチコウは感情を抑えてセナに尋ねた。今後のことを考えれば政府のアンドロイドを破壊するのが最適だ。理真の存在を知った以上、奴らから逃げても、一生追いかけられるのが落ちだ。ならば政府の手先のアンドロイドを破壊して、しばらくの間、動きを封じ込めるのが今の最良の行動だ。
 しかし決めるのは彼自身。
「お前、自信はあるのか?」
 自信がないのなら、やるべきではない。彼がいくら理真への強い気持ちがあったとしても、勝てるという自信がなければ……。
 セナは車の中にいるハチコウへ、いつものあのヘラヘラした笑みを浮かべて答えた。
「自信はある」
「……無理して言ってるんじゃないだろうな?」
「大丈夫だよ。オレの実力、見せつけてあげるよ」
 車の車体に寄り掛かり、セナが言った。
「政府No.1のアンドロイドに、三流アンドロイドの死ぬ気を見せつけてやるんだ」
 やはりセナは自分を三流アンドロイドと言う。彼の実力は、政府直属のアンドロイドにも匹敵するというのに。
「……お前、いつまで自分のとこ、三流アンドロイドって言ってるんだよ」
「オレは汚い工場で、理真ちゃんとひっそり生活するのが好きなんだよ。この面倒な事件が終わったら、理真ちゃんともう1度一緒に暮らすんだ。それで、誰にも邪魔されずに楽しく過ごすの。そのためには三流アンドロイドの身分が一番なんだよ。」
 満足そうにセナは言った。
しかしハチコウはセナの穏やかな顔を見て、不安を感じた。もしや、自分が死んでも政府のアンドロイドを破壊するつもりなのでは……。そう思ったのだ。
理真のことを強く思うセナなら……やりかねない。
「じゃね」
 セナはふふっと笑って、自分の愛車から少し離れた。早く行かなければならないのだ。ハチコウとゆっくり話している時間はない。
「死ぬなよ!!!」
 少しずつ離れて行くセナに、ハチコウは慌てて叫んだ。するとセナはハチコウの大声に驚いたようで、目を丸く見開き固まった。
「何言ってるの?死なないよ」
 そう答えて、彼は人知れず黒い銃を手に取り、ビルの入口へと歩いて行った。



49-1








スポンサーサイト
web拍手 by FC2


プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

ブロマガ購読者向けメールフォーム


検索フォーム
すぴばる
ブロとも申請フォーム

この人とブロともになる

QRコード
QR


上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。