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2012.01.31     カテゴリ:  Duty-本編- 

   16話 存在しない心


 まだ薄暗い光りしか入らない理真の部屋の中。小さな寝息を立てて眠っている彼女を起こさないようそうっと立ち上がると、なんとなくぼやける目を細めながら彼女の枕元にある時計を見る。午前6時ちょうどだった。彼だってアンドロイドだ。朝早く起きようと思えば起きることができるし、やろうと思えば何だってできる。やる気があればの話だが。
 ここ4、5年。自分に備えられている機能の7割も使っていない。12ケタ以上の計算能力。赤外線センサーを用い、視界に入ったものの表面温度を画像化するサーモグラフィー機能。地図をより立体的な情報にするための3D化機能。こんなものは普通の生活では何も役に立たない。5、6年前はその機能を充分に使っていた。だがもう一生使うつもりはない。
 そっと白いドアを開け、彼は静かに理真の部屋から出た。一直線に続く13段の階段を音を立てないようにして降りると、彼は玄関へと運ぼうとした足を止めた。彼が目を細めながら見つめていたのはリビングへのドアだった。彼も失礼だとは分かっていた。だが彼はそのドアを開け、恐る恐るリビングへと入ってしまった。彼女が今まで生活してきた空間。それを感じたかったのだ。彼女の言う通り、アンドロイドのくせに何が分かるのだと普通なら思うだろう。だが本当に感じ取れる。彼女を取り囲んでいた、温かい幸せが。
 少し大きいリビングにはキッチンとダイニングテーブル、そして奥には大きいテレビとソファーが置かれていた。比較的裕福な環境で彼女は育ったのだろうと、部屋を見渡して思った。そしてふと自分の隣に静かにたたずむようにして置かれている、引き出しに目がいった。その上には彼女の家族写真が列を成して並べられていた。
生まれたばかりで、まだ目も見えていないような彼女を、嬉しそうに抱き抱える彼女の母親と、その2人を愛おしそうに見つめる彼女の父親。やっと机に掴まりながら立てるようになった、ふわふわな髪の彼女。公園の砂場で母親と楽しそうに遊ぶ彼女。幼稚園の演劇界で妖精役の彼女。小学校の入学式でまだ大きいランドセルを一生懸命に背負う、オレが知っている2つ結いの彼女。家族3人の家族旅行。やがて母親の身長に近づいてきた、彼女の中学校の入学式。髪が伸び、大人びた彼女がピースをしている高校の入学式。
 17年間の彼女の記憶。17年間の彼女の成長。オレはまだ目も見えていない赤ん坊の頃の彼女の写真を見て思うのだ。君はこんなに辛い思いをするために生まれてきたわけではないのにと。君が幸せに生きてきた17年間は、これからも続いて行くはずだった。だがそれが、たった1人の人間によって壊された。あの女によって。
 守ってあげられなくてごめんね。こんなに冷たい世の中でごめんね。…だがもしオレが彼女の傍にいたとしても、彼女の両親の交通事故という不幸から彼女を守ることはできなかっただろう。しかし、彼女が手首を切るという行為を行うことは、オレが止められたことだ。オレが彼女を守ってあげられなかったから…。
 どこかで彼女を直視できない自分がいた。オレに笑顔を教えてくれた少女のままの彼女でいてほしくて、加害者の女を憎み、殺そうとまで思っている彼女を、オレは心のどこかで恐れていた。結局オレは助けたつもりになっていただけだった。オレは彼女を不幸へ陥れたあの女と同じだ。…だから決めたのだ。オレが不幸な彼女に寄り添おう。不幸な彼女がまた幸せになれるように、亡くなった彼女の両親の代わりに、オレが…オレが彼女を育てよう。あと1年。彼女が高校を卒業するまで、オレが彼女を責任を持って育てる。



「どうしたの?こんなに早い時間から。」
 ドアを開けると、そこにいたのは愛しい彼の姿だった。付き合って5年。友達に5年間付き合っている彼がいると言うと、結婚すればいいのにと言われ、会社の同僚に彼の写真を見せると、決まって羨ましがられた。背が高く、綺麗な目をしている彼は私の自慢だった。その彼が今目の前にいる。5年経っても、私はまだ彼に見つめられる度、頬を熱くする。
「ごめん。今日も仕事でしょ?」
「うん。でも大丈夫。入って。」
 アパートの住まい玄関で彼はいつもなら微笑んでくれる。しかし今日は表情が固かった。
「ごめんね。部屋汚くしてて。コーヒーでいい?」
「有里香。」
「何?」
 低い声で名前を呼ばれ私が彼に顔を向けると、私を今まで愛してくれていた唇がゆっくりと言葉を発した。
「…別れよう。」
 いつもの冗談?最初はそう思った。けれど彼の表情は本気だった。朝の冷たい部屋の中で私と彼は立ち尽くしていた。この時は笑いながら私の傍にいてくれる優しい彼ではなく、全く知らない男の人が私の目の前に立っているようだった。
「どうして?私、何かした?何かしたなら謝るから。」
「違う。」
 なら、どうして別れようなんて言うの?私に飽きたの?
「許して。」
「セナ、待って。教えて?どうしていきなり別れようなんて言うの!?」
「…君をこれ以上だますわけにはいかないし、オレももう自分に嘘はつきたくない。」
 彼はそんなことを口走る。私は無言で首を横に振った。そんな私に彼は優しく微笑みながら言う。
「本当のオレを知ったら、君はきっとオレを愛せなくなる。」
「そんなことない!私は!」
「オレが人間じゃなくても?」
「…私知ってるよ?セナが普通の人間じゃないことくらい。だって5年経ってもセナ、5年前と何一つ変わってないじゃない。まるで年齢が…止まってるみたいに。」
 そう。私は気づいていた。彼が普通の人間ではないことを。けれど彼は自分のことを何一つ話してはくれなかった。どんな仕事をしているのかも。本当の名前も。だから私が彼につけたのだ。セナという呼び名を。
「ねぇ。教えて。あなたは一体…」
 彼は私の目を真っすぐ見つめ、そしてはっきりと答えた。
「アンドロイド。」
「…え。」
 アンドロイド。それは造られた人間。
私は目を丸くして彼を見つめた。それと同時に私の心は恐怖に支配された。私は5年間、造られた人間に恋をしていたのかと。
「有里香。」
 彼が1歩私に近づいた時、私は慌てて大きく後退りをしてしまった。それでも愛しているという心とは裏腹に、私の体は彼が近づくことを拒否していた。彼が怯える私の目を捉えると、悲しそうな笑みをそうっと浮かべた。
「ごめんね。オレ、もう出て行くね。…元気でね。」
「いや!待って!」
 玄関へと向かおうとする彼の腕を、気持ちだけで掴んだ。そして私は目を強く閉じると、彼の唇に自分の唇を押し当てた。


有里香 セナ



 以前ならば何気なくできたこの行為だが、今は全ての勇気を振り絞った。しかしその勇気は必ずしも本心から生まれた勇気とは限らない。そっと目を開けると、先程よりももっと悲しそうな目をしている彼がいた。そして私は気がついた。彼がさらに悲しそうな目をして理由を。…私の唇が震えていたからだ。彼は私の手を自分の腕から離すと、私の唇からも離れていった。
「…もう無理する必要なんてないから。オレが貸してたお金も、もう返さなくていいよ。」
「…セナ!待って!私の話を聞いて!」
 私の好きな彼の茶色の髪が小さく揺れる。
「私はセナにたくさん助けてもらった。私がセナのところ好きだって言ったら、セナはちゃんと私を受け入れてくれた。…でも、心はどこか違うところにあった。…それは造られた人間だったから?これ以上自分に嘘がつけないって言ったのも、自分の心がどこにあるのか分かったから?」
「…オレに心なんてないよ。」
 鼻で笑うようにセナが答えた。
「オレに心があったら、こんな風に悲しませるような事態はきっと避けられたよ。…オレが全部悪いんだ。有里香は何も悪くない。ありがとう。でもオレ、楽しかったよ。5年間。」
 最後の最後、私の部屋から出て行くまで優しい彼のまま変わらなかった。そんな優しい彼に心がないはずがない。彼はきっと自分の心がどこに存在して、自分の心が何を求め、何をしたいのか、きっと分かったのだろう。私はただ床に座り込み、声を殺して泣くことしかできなかった。


更新遅くなりましたw

すみませんでした☆
『Duty』楽しんでいただけていますかね…

感想やコメントをもらえると嬉しいです☆
↑私にエネルギーを!


読者さんがたくさん増えたら、

登場人物とかのカテゴリーを増やす予定です☆

心のオアシスを自ら破壊したセナ君w

まぁ…彼を見守ってあげてください…。

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プロフィール

 リンス 

Author: リンス 
リンスといいます☆


大学三年生です!
最近、就職についていろいろ悩み中です

小説「Duty」が完結し、これからどうするか考えています!

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